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サッカー日本代表・久保裕也の活躍にみる世代交代の波

ポスト役として評価の高まる大迫の存在が久保の追い風に

 得点とアシストという目に見える結果を出した久保。本人も口にした「良い流れ」が自らの実力で引き寄せているものであることに疑いの余地はない。しかし、もう1つ久保のポジション奪取を後押している要素が存在する。  ハリルホジッチ監督が就任以来かかげてきた「ボールを奪ってから縦に速いサッカー」を実現するには、全体を一気に押し上げるためにも「前線でタメを作れる選手」が必要不可欠となるが、その役割を担う選手が、これまで右FWでプレーしてきた本田圭佑から、3トップの真ん中のポジションで1番手となった大迫勇也に変わったことだ。  大迫は今季、所属するケルンで堂々のプレーを継続。その活躍が評価され、11月に行われたホームでの対サウジアラビア戦で日本代表復帰を果たすと、クラブでの好調そのままにスケールの大きなプレーを披露し、いわゆる「9番」のポジションの一番手に躍り出た。先日の対UAE戦でも序盤からキレのある動きを見せ、後半負傷交代でピッチを去るまで抜群の存在感でチームを牽引してみせた。  出場した2試合でゴールこそないながらも大迫が評価される理由は、広いシュートレンジや守備での貢献度に加え、前述した「前線でタメを作る」という役割を高いレベルでこなせるからだ。相手DFと競った状態でも驚異的なキープ力でボールを保持できる大迫は、日本では数少ない時間を作れる選手だ。  奪ってからの速い展開でゴールを目指すスタイルを標榜する現在の日本代表にとって、このタイプの選手は欠かすことができない。速いサッカーをしたいのなら単純に原口、浅野、武藤といった足の速い選手を前線に並べればいいようにも思えるが、それだけでは速いサッカーは機能しない。前線でボールが収まるポスト役をこなせる選手がいて初めて他の選手たちは迷いなく前方のスペースに飛び出していけるし、またそこからの連動した崩しも可能となるのだ。  大迫が代表復帰するまでは、3トップの右でプレーする本田圭佑がその役割を担ってきた。この最終予選で本田の良さが最も分かりやすく出た場面が、10月に行われたイラクとの試合での先制点の場面だ。前半26分、自陣中央まで戻った原口がボールを奪うと、すぐにハーフウェイライン手前にいた清武に預けてカウンターを発動。  清武はドリブルでピッチ中央を持ち上がると、前線で駆け引きをしながら左前に流れた岡崎を見つつ、右前の本田に預ける。本田が相手との間合いを計りながらボールをキープして作った数秒間の間を利用し、預けた清武が大外から本田を追い越しスルーパスを引き出すと、これをゴール前に飛び込んだ原口に見事に合わせてみせた。  クラブでの出場機会が無く、代表でも以前ほどの存在感を失っているにも関わらず、ハリルホジッチ監督が本田を起用し続けた理由はここにある。その役割を大迫が十分に果たせると見た指揮官は、大迫が先発した前述のサウジアラビア戦以降、一度も本田を先発させていない。  そういった前線の役割分担の観点から考えると、先日のタイ戦では大迫の負傷離脱により岡崎が先発出場したため本田をポスト役として起用する可能性も考えられたわけだが、それでも本田が出場しなかったということは、いよいよ今度こそ本田の居場所はなくなったと考えるべきかもしれない。タメを作るポスト役として計算の立つ選手が他に現れた以上、クラブで試合に出ておらずコンディションの整わない本田を先発させる理由はないのだ。そうなってくるといよいよ、右FWの一番手は久保ということになってくる。  囲み取材の最後に、ある記者から「本田選手からポジションを奪った実感はあるか」と問われた久保は「絶対的なポジションは無いので、これを続けていくしかない。また呼ばれるように、クラブでも結果を残さないと」と危機感を口にした。出色の活躍を見せた直後ではあったが、本人はいたって冷静だ。 「リオ世代がA代表に食い込んでいかないといけない。それは同世代の誰もが感じていることだと思う」(久保)  大きな世代交代の波が押し寄せつつあるサッカー日本代表。その時は、すぐそこまで迫ってきている。 取材・文/福田 悠 撮影/難波雄史
フリーライターとして雑誌、Webメディアに寄稿。サッカー、フットサル、芸能を中心に執筆する傍ら、MC業もこなす。2020年からABEMA Fリーグ中継(フットサル)の実況も務め、毎シーズン50試合以上を担当。2022年からはJ3·SC相模原のスタジアムMCも務めている。自身もフットサルの現役競技者で、東京都フットサルリーグ1部DREAM futsal parkでゴレイロとしてプレー(@yu_fukuda1129
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