“ミスター・サンフレッチェ”佐藤寿人がJ2移籍を決断した本当の理由
ミスター・サンフレッチェ、佐藤寿人。量産したゴールでサンフレッチェ広島の黄金期を支えた男だ。広島の地でユニフォームを脱ぐことを、周囲も、そして自身も疑ってはいなかった。だが昨年、寿人が下した決断は移籍……。J1でもなければ、海外でもない。J2へ降格した名古屋グランパスだった――。何が彼を突き動かし、そして新天地で何をしようとしているのか?
――J2第6節の熊本戦でようやく移籍初ゴールが生まれました。
佐藤:あのときはアップ中からファンの方に背中を押していただき、ゴールを決められてホッとしました。やっぱり、どのクラブでも1点目のゴールは特別ですし、ましてやホームで決めることができたのは嬉しかった。ただ、その試合でハムストリングを痛めてしまい……。
――移籍直後は名古屋で初めての一人暮らしも経験したそうですね。
佐藤:名古屋にはしばらく単身赴任でした。これまで身の回りのことはほとんどやらなかったですし、家に帰れば誰かいるのが当たり前。暗い部屋に電気をつけることもなかったくらいです。初ゴールを決めた熊本戦のあとも、夜は自宅で一人。リゾットを作って食べていましたから。その前は2日連続で同じ定食屋。でも、バレて声をかけられたときはちょっと恥ずかしかったですね(笑)。
――12年間プレーし、3度のリーグ優勝を経験したクラブを離れるのは簡単ではなかったと思います。どんな心境でしたか。
佐藤:悩みましたね、やっぱり。僕自身、去年は同級生の森﨑浩司が引退するのを見て、たとえ満足な出場機会がなくても、できることをやって広島で引退したいという気持ちが強かったので。それに息子たちに、プロサッカー選手の華やかな部分だけじゃなくて、もがき苦しむというか、どんな状況でも懸命に努力する姿を見てほしいという思いもありました。ましてや移籍先がJ2ですから。
――移籍決断の決め手は何だったのでしょうか。
佐藤:去年のリーグ最終戦1つ前、福岡戦でゴールを決めたのですが、そのあと天皇杯を含め2試合出番がなかったんです。あのときは監督と握手するときに監督の目を見ることができなかった。単純に悔しかったんですよね。そんなとき、名古屋からのオファーがあったんです。
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