ホークとケンスキーの出逢いwithマサ斎藤――フミ斎藤のプロレス読本#012【Midnight Soul編7】
「アニマルはこれからどうするつもりなの?」
元パートナーのことをもういちどだけ聞いてみることにした。
「ネバー・セイ・ネバーNever say never。でも、ロード・ウォリアーズをやることはないだろうな。オレはケンスキーを正式なパートナーだと思っている。アニマルが新しい相棒を見つけたら、そうだなあ、いつかは敵味方に分かれて闘うことになるんじゃないかな。オレはそれがいちばんいいと思う」
ホークはビールをいっきに飲み干すと、空になった缶を右手でつぶした。
パワー・ウォリアーになった健介は、ホークのように顔にペインティングをして、ホークのようなスパイク・プロテクターのコスチュームに身を包み、ホークのような黒のロングタイツと黒のブーツでリングに上がっている。ビジュアル的には日本製のロード・ウォリアーズになった。
基本的なキャラクター設定と試合のスタイルはこれまでとほとんど変わらないが、ホークにとっては、日本をホームリングにしてプロレスをつづけていくことが自分のなかの新しい出発点になっている。どうしたらほんとうにハッピーになれるかを考えに考えたらこうなった。
「たばこ、1本もらえねえか」
ホークはふだんはたばこなんか吸わないけれど、ビールを飲んで饒舌になってくるときまって一服したがる。ホークが手にとったたばこにぼくが火をつけてあげると、ホークは最初のひと口を深く吸い込み、それから天井に向かってゆっくりと煙をはき出した。
「じゃあ、あとでまた来る」
そういうと、ホークはさっきいたところに戻ってビデオの山をひっかきまわしはじめた。そして、気に入ったのを一本みつけるとそれをビデオデッキのなかに乱暴に放り込み、それから後方の座席へと消えていった。
ホークが選んだ映画は『ナショナル・ランプーン・クリスマス・バケーション』だった。(つづく)
※文中敬称略
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文/斎藤文彦 イラスト/おはつ1
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