更新日:2017年11月14日 22:45

知らぬは損。一度は見たいウィルチェアーラグビー日本代表の魅力

ラスト1秒の攻防に会場は熱狂

 その時間調整の妙で会場が大きくわいたのが決勝戦のラスト1秒の攻防。この試合、ここまで51-52と日本は1点ビハインドの状況でした。アメリカ側はこの1点で勝ち切るために、日本の最後の攻撃に秒数を残さないような調整をしてきています。  しかし、残りのわずかな時間を「ボール投げる⇒タイムアウト⇒ボール投げる⇒タイムアウト」と時計を止めながらジワジワ進むという作戦を日本は展開。最後は残り0.6秒から「ゴール前で待つ味方にロングパスを1本通せれば同点」という状況まで持っていったのです。この最後の1本は、タイムアウトの間にワクワクしながら待つ気持ちも含めて、本当に見ごたえがあるものでした。

残り0.6秒で1点ビハインドから、日本代表が最後の攻撃を仕掛けるなんて燃えるじゃないか!

 結局、日本の最後の攻撃は実らず試合は37-38でそのまま終わりますが、パラスポーツという物珍しさを抜きにして、大変楽しく、大変盛り上がる観戦体験でした。もしもパラリンピックの決勝でこの展開だったら、五輪種目以上のワクワクもあり得ただろうと思ったほど。  その楽しさを支えてくれたのは、試合を通じて場内に流されていた実況&解説だったり、来場者に配布されたルールをくわしく記したパンフレットの存在でした。とにかく会場での実況と解説が丁寧でわかりやすい。ルールの紹介から、試合中のアクシデントに対する説明など、テレビの野球中継か何かのようなこなれ具合です。  パンフレットには基本ルールの解説だけでなく、審判のジェスチャーをイラストで解説するコーナーなどもあり、いたれりつくせり。「2020年に向けて手元に残しておこう」と思えるような出来栄えです。会場では、パラスポーツのルールをコンパクトに解説する小冊子がウィルチェアーラグビー以外にも配布されており、まとめてもらってしまったほど。 ⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=1355125

こんなところにも「いらすとや」! ウィルチェアーラグビーの審判ジェスチャー集

会場でまとめてもらってきたパラスポーツのルール解説冊子

 とかく穴場競技では、運営だけで手いっぱいで「観客」の存在を意識してくれない現場が多いものですが、ウィルチェアーラグビーはパラスポーツでありながらヘタな五輪種目よりも一歩先を進んでいるように感じられました。そういえば、以前の記事で紹介したゴールボールの現場も、骨伝導スピーカーで解説を聴かせてくれたり、サポートが手厚かった。むしろパラスポーツのほうが、何とかして盛り上げよう、何とかして楽しんでもらおう、という気概が感じられます。  チケットが手に入るかどうかで言えば、ちょっと現時点でのお客が多く、「そこそこ」の穴場という印象ですが、試合展開の面白さやもしかしたら「金メダル」が見られるんじゃないかという日本代表の実力を考え合わせると、これは「かなりいい」穴場かもしれません。どんな競技であれ、日本代表が金メダルを獲るところを見られたら、夢心地でしょう。五輪でそのチャンスがあるのは誰でもわかるような有名選手・実力者であり、「穴場ではない」わけですが、パラリンピックならイケるかもしれない。

アメリカ人監督の指示もわかりやすい! 勝負所でのディフェンスシステムの指示のために、カタカナで「ゾーン」と書いたボードをちゃっかり準備。相手を想う気持ちが、わかりやすさにつながっている! ホワイトボードにテープで「ゾーン」!ものすごく、伝わる!

 わかりやすくて、面白くて、先進的。2020年までひきつづき穴場として残っていてくれたら、ぜひ観に行きたい穴場。ウィルチェアーラグビーはなかなか期待感のある競技でした。
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