激しさはサッカーを超え。ブラインドサッカーは選手の勇気を観戦するスポーツ
~今から始める2020年東京五輪“観戦穴場競技”探訪 第45回~
※前回の話…スポーツ好きブロガーのフモフモ編集長が、東京五輪でチケットが買えそうな穴場競技探訪へと出かけました。今回のターゲットはパラリンピックのブラインドサッカー。チケット争奪戦確実な男女サッカーに比べると地味ながら、パラリンピックとはいえ、サッカー的な魅力に溢れた穴場に違いない。そんな目論見から国内最高峰の大会を訪れたフモフモ編集長だったが、その内容は予想をはるかに上回る地味さであった……
国内トップの選手たちはもちろん、世界一のブラジル代表でさえ、ボールの場所は正確に察知できていません。転がってきたボールを目の前でスルーしたり、足の間をボールが転がって抜けていくのは当たり前。ボールの転がる音だけではよくわからないので、フェンスに当たってボーンという音がしたところで、ようやくボールの場所をみんなが気づくといった具合。
フェンスに当たる⇒音がする⇒フェンスを手すりのようにして選手が移動しボールに触る⇒そこからプレー開始
というのが基本線。
ブラインドサッカーというよりは「手探りサッカー」でした。
⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=1323797
もちろんブラジル代表ともなれば、手探りのスピードも早く、個人技は十分に上手いのですが、思っていたのとはだいぶ違うことは否めません。ボールを持ってから個人で行なうドリブルは巧みでも、それはボールに触れつづけているからできることで、ボールが足元から離れれば再び手探りからのやり直し。
浮き球のパスを送ったり、逆サイドにパスを出したりする場面も、攻撃時の位置取りをある程度決めているからできることで、コウモリのように音でボールと味方の位置を察知しているわけではない様子。「大体」で蹴って、フェンスの跳ねかえり音で判断する格好です。
「手だけでなく目も封印して、より点が入りづらくなったサッカー」
といった感じ。
同じパラリンピック競技のゴールボールは、目隠しした同士でサッカーのPK戦のようなことをする競技ですが、コチラを観戦した際はまるで見えているかのようにボールの位置を察知することに驚いたもの。味方が弾いて転がったボールを、別の選手が駆け寄ってフォローするなど、本当に音だけでボールの位置がわかってプレーしている様子が感じられました。外部からの指示はタイムアウト時以外は禁止されており、全員が目隠しした状態で試合を進め、目隠しした選手が「右!」とか「左!」とか的確に指示を出すのは、お見事だなと思いました。「見えないわりにスゴイ」ではなく「耳がスゴイ」というレベルに突き抜けていた。
しかし、同じ感覚でブラインドサッカーを見ると、すごく微妙な気持ちになります。
「やっぱり無茶なんじゃないのか……」
という率直な疑問です。
目が見えないけれどサッカーをやりたい、という気持ちは尊重するとしても、ルール作りの面で本当にコレで十分なのかという心配がふつふつとたぎってきます。
フィールドの広さに対してボールの音が小さくて聴き取りづらかったり(もっと大音量にすればいいのに)、
ゴールキーパーだけ何故か目が見えてOKということになっていたり(全員が目隠しするほうが夢があるのでは?)、
そのわりに「キーパーはココから出ちゃダメ!」という制限を掛けていたり(全員目隠しで移動制限ナシにすべきでは?)、
サイドラインにだけフェンスを立ててゴールラインには立てていなかったり(フェンス立てればいいのに)、
そのせいでゴールキックとコーナーキックだらけの試合になったり(しかも全然得点につながらない)
……とにかく、競技を盛り上げるためのルールになっていないのです。
目の見えるキーパーが遠くのフェンス沿いにいる味方を目掛けて投げる⇒フェンスに当たったボールを味方が手探りで触る⇒単独ドリブル突破⇒ゴールラインを割ってゴールキックになる、という展開の多いこと多いこと。
たまにコーナーキックになっても、主審が「ボールはここだよー」と教えたり、目の見えるゴールキーパーがひとりずつ味方を導いて壁を作ったり、すごく時間をかけて状況を整えるのに、コーナーからバックパスして終わったりするのです。
サッカー以上にじれったい感じが募ります。
試合展開が単調になりがちな理由
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