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北朝鮮危機“第2章” 中国を押しのけ急接近するロシアの影



 一方、北朝鮮は「中ソ論争」の1960年代以降、「中ソ等距離外交」のスタンスを取り始め、その後、徐々に親中国にシフトしてきたわけだが、ここにきて、そんな強固な中朝関係に大きな変化が生じているという。宮崎氏の著書から一部引用する。

“2013年に李源潮中国共産党政治局員(国家副主席)が訪朝して金正恩と会談して以来、両国の指導部レベルの往来は途絶えたままである。
 中国は朝鮮半島の非核化を主唱しており、経済制裁はアリバイ工作程度にしか行わなかったが、2013年の3回目の核実験で、ほぼ匙を投げてしまった。
 つまり中国も内心では北朝鮮のやり方を歓迎していなかった。”


 中朝関係の現在について宮崎氏が話す。

「近年、中国の北朝鮮情報の精度が高くなってきています。さらに、中国ではメディアの主張に大きな変化が見られる。『環球時報』などは、社説で『アメリカが先制攻撃を仕掛ける前に、中国こそが攻撃をするべきだ』とまで言い切っています」

 北朝鮮の核ミサイルは、すでに北京、上海といった中国主要都市を射程内に捉えているのに対し、ICBMの開発に成功していないとみられる現段階では、アメリカに届く核ミサイルを北朝鮮は保有していない。中国共産党機関紙『人民日報』の国際版といわれる『環球時報』が、こんな物々しい主張を載せたのもこうした背景があるからだ。

 一方、ロシアはどう考えているのか? 再び、宮崎氏の著書の一節を引用する。

“2014年、ロシアが北朝鮮への積極的アプローチを急速に展開した。
 同年2月のソチ五輪に金永南最高人民会議常任委員長(国会議長に相当)が出席し、プーチン大統領と会見している。これが直接的な露朝関係の復活となった。
 その後、玄永哲人民武力相も2度モスクワを訪問して、ロシアとの軍事関係の緊密化を話し合った。
 時期的には北朝鮮政治の中枢にあった張成沢の処刑(2013年3月)に激怒した中国が北朝鮮への経済支援を縮小した直後だった。ロシアはこの機会に便乗した。
 また張成沢粛清に立腹した中国は習近平がソウルを訪問するという破天荒な外交に舵を切り、平壌は平常心を失いかけていた。このタイミングでロシアは平壌にぐんと近づいたのだ。
 中国とのバランス、西側への牽制という政治的意図は露骨だが、もう一つはクリミア併合で国際社会から非難を受けて孤立したときに北朝鮮が賛成に回ったからだ”


 この記述を裏付けるように、6月27日に共同通信が、金正恩朝鮮労働党委員長の統治資金を管理する党機関「39号室」で燃料調達に携わった元幹部のインタビューに成功したとする記事を掲載。北朝鮮が、ロシアから年間20万~30万トンもの石油製品を調達していたことが明らかとなった。

 北朝鮮経済を支えるロシアの影……。これまで、中国ルートを断絶することのみ腐心してきた米国は、早急に対応を迫られることになりそうだが、そんな米国をあざ笑うかのように、再び北朝鮮が挑発行為に出る。6月22日、米FOXテレビが、複数の米政府当局者の話として、北朝鮮が北西部・東倉里の西海衛星発射場で、ICBMに利用可能と見られるロケット・エンジンの燃焼実験が実施された、と報じたのだ。

 かねてから、トランプ大統領の考える「レッドライン」(超えてはならない一線)は、米国本土を射程距離に捉えることのできるICBMの開発だと言われてきた。北朝鮮から米本土に到達するICBMを開発するには、複数のエンジンを組み合わせた「多段式」にする必要があるが、今回、FOXテレビが報じた実験は2段目か3段目に使うエンジンだという。

 これが事実だとすれば、トランプ大統領の設定した「タイムリミット」を超えた時点で、米国は北朝鮮近海に派遣した軍を背景に、武力をもってICBMの開発凍結を北に迫る可能性が高まるのは間違いない。

 すぐそこにある危機が現実のものとなるのか? 北の大国・ロシアの動向が注視される。

<取材・文/日刊SPA!取材班>

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金正恩の核ミサイル 暴発する北朝鮮に日本は必ず巻き込まれる

目の前の危機に、日本は適切に対応できるのだろうか。





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