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被災地でカタギに搾取されるヤクザたち――不正軽油を無理やり買わされ、賃金も踏み倒され…

’08年の暴対法施行、さらには’11年に暴排条例が全国で施行されて以降、暴力団の居場所はどんどんと狭くなっている。この情勢に応じて一般人がヤクザを脅すというかつてなら考えられないような事態が起きているようだ。

不正

不正軽油に賃金未払い。被災地で搾取されるヤクザ


 ’11年3月の東日本大震災を受けて、東北地方の被災地復興を目的として約32兆円の公金が投入されている。この莫大なカネの主な受け皿となっているのが、建設業界だ。高台移転、道路、公営住宅、防潮堤などハード面での復興事業に多くの資材とマンパワーが投じられており、’16年までの支出実績で約14兆円に上る。

 こうした利権にあずかろうと、全国各地から現役ヤクザや企業舎弟が建設作業員を引き連れて被災地に大挙集結している事実は、すでに多くのメディアが報じている。ヤクザにとって人材派遣は伝統的な生業であり、東北の人手不足は絶好のビジネスチャンスなのだ。

 だが、反社企業が幅を利かせ、そのバックにいるヤクザが暴利をむさぼっているとする論調は、一面的にすぎる。大規模かつ長期の建設事業が行われている被災地では、当局による監視の目が行き届かない闇の部分が多々ある。そうした無法の場所では、度胸のあるカタギが、まるでヤクザのように振る舞う状況が発生している。

不正軽油を無理やり買わされる反社企業


 岩手県での建設工事に出入りしていた伊藤浩司さん(仮名・49歳)は、現場に広く不正が蔓延し、ヤクザや反社業者に押しつけられていると告発する。

「東北地方では復興の美名のもとに、不正軽油が横行している。被災地が多忙で、県税事務所の調査がゆるいためだ。バレないように夜中に重機に給油している」

 暖房などに使われる灯油は、トラックや重機の燃料として使われる軽油と組成はほぼ同じだが、軽油引取税がかからない分、3割程度安い。ここに着目し、軽油に灯油を混ぜるなどしたものが不正軽油と呼ばれる。製造した場合にはなんと3億円以下の罰金、原料の提供や運搬には2億円以下の罰金、保管・運搬・販売ですら1億円以下の罰金が科される重罪だ。

「不正軽油は誰彼かまわず売られているわけではなくて、密造業者が建設工事の元請け業者に売り、そこから下請けに流れていく。工事現場に配達するから、それを使えと指示をする形だ。例えば下請け30社に月100万円で売るとすると、1年で3億円ほど儲かる。罰金なんか屁でもない」(伊藤さん)

 一方、下請け業者の場合は、不正軽油の購入に対して1億円以下の罰金が科され、さらに軽油引取税の脱税に問われる。北関東で建設業を営む宮島忠夫さん(仮名・57歳)が、不正軽油押し付けの経緯を明かしてくれた。

「ウチが元請けから買わされていた不正軽油は46%が灯油。いくら軽油より安いといっても、不正軽油はダンプや重機の故障の原因になるので、みんな本音では使いたくない。耐えかねて断ろうとしたら逆ギレされたので県税事務所に内部告発しました」

 絵に描いたような下請けイジメだが、実は最も搾取されているのは告発すらできない反社企業なのだという。

「悲惨なのは、リース車を使っているような末端の業者です。そういう会社は暴力団のフロント企業だったり、社長が現役ヤクザと裏で繋がっていることが多い。スネに傷のある立場としては、ウチみたいに元請けを告発するなんてことはできないから、そこに目をつけて無理やり不正軽油を買わせる。なかには運搬から購入まですべて押しつけられる末端業者もいる。彼らみたいな業者が最前線で働いているのにね」(宮島さん)

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反社企業とわかって契約をして賃金を……

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