貯金のために「ロレックスを買う」という行為がとても良い効果をもたらす理由
―[腕時計投資家・斉藤由貴生]―
腕時計投資家の斉藤由貴生です。もう20年近く高級腕時計をお得に楽しんでいる私ですが、そんな私でも腕時計を買わない時期がありました。それは二度ほどあったのですが、なぜ買わなかったかというと逡巡からです。
私が後ろめたさを最初に感じたのは、家族に高級腕時計を買っている姿を注意された時。高級腕時計は一見すると無駄遣いに見えますが、私の買い方は「より高く売る」という方法。まして自分が稼いだお金で買っているため、どのような観点でも注意される筋合いはないのですが、10代の私はそれを真に受けてしまったのです。
二度目の逡巡は、私が24歳で大学に入学した時のこと。20代半ばで大学に入学するのだから学業を本気でやらなければならないと感じ、自分の中で時計を買うことに対して勝手に引け目を感じていたのです。
しかし、これら躊躇逡巡は、なんら良い影響をもたらすことはありませんでした。
私が買わなかった時期に欲しかった腕時計は、今となってはどれも値上がり。そして、もしもそれらを買っていれば、今ごろ余裕で100万円を超える儲けとなっていたのです。ですから、自分の気持ちに従って素直に腕時計を買っていれば、100万円以上の得をしたところ、買わなかったために100万円儲ける機会を失ったというわけです。
さらにひどいのは、腕時計を買わなかった私は、結果的に腕時計と同額のお金を使っていたという点。特に、大学入学時代はその環境の変化のストレスからか、同年代の友人と頻繁に飲み屋で高いお金を払って飲食するなど、無駄遣いが激しかったように感じます。
つまり、腕時計を買わなかったぶん、貯金に余裕があると錯覚し、腕時計と同じ分の消費をしてしまったのです。
腕時計の場合、値下がりとなってしまった場合でも価値が残りやすく、その残存価額率の高さは以前の記事でもお伝えしたとおりです。一方、飲食店で支払ったお金は、絶対に戻ってくることがありません。そのため、「腕時計を浪費だと決めつける非論理的な思考」によって、私は欲を自重したつもりでも、結果的にはそれが最大の浪費という“仇”となって返ってきたのです。
腕時計が好きな私は、その腕時計が欲しいと思った時点で、ある程度の経験と溜まっている知識を元に無意識的にいろいろな計算しているため、「出した答え」は正しい可能性が高いのです。ですから、自分のことを信じなかった自分がいけなかったのです。
この浪費してしまった額と、買おうと思っていた腕時計の値上がりによって、本来手にすることが可能だった利益を併せると、その損失額は250万円以上という額になるでしょう。つまり、私は「一見正しそうな常識」に惑わされたがゆえに250万円分の損をしたのです。
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1986年生まれ。日本初の腕時計投資家として、「腕時計投資新聞」で執筆。母方の祖父はチャコット創業者、父は医者という裕福な家庭に生まれるが幼少期に両親が離婚。中学1年生の頃より、企業のホームページ作成業務を個人で請負い収入を得る。それを元手に高級腕時計を購入。その頃、買った値段より高く売る腕時計投資を考案し、時計の売買で資金を増やしていく。高校卒業後は就職、5年間の社会人経験を経てから筑波大学情報学群情報メディア創成学類に入学。お金を使わず贅沢する「ドケチ快適」のプロ。腕時計は買った値段より高く売却、ロールスロイスは実質10万円で購入。著書に『腕時計投資のすすめ』(イカロス出版)と『もう新品は買うな!』がある
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『もう新品は買うな!』 もう大量消費、大量生産で無駄遣いをするのはやめよう |
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