自由な魂はライヴしか信じない――フミ斎藤のプロレス読本#090【サブゥー編エピソード10】
サブゥーはWWEと専属契約を交わしかけたこともあったし、WCWの“マンデー・ナイトロ”のTVマッチに登場したこともあった。しかし、サブゥーはサブゥー自身の判断でメジャー団体と距離をとった。
サブゥーがサブゥーであるためにはどうしたらいいのかを突きつめていくと、やっぱりこういう方法しかない。第3のメジャー団体に急成長をとげたECWのリングには契約書のないフリーの立場で上がりつづけている。
ポール・E――のちのポール・ヘイメン――がサブゥーを必要としているうちはずっとECWに協力するし、そうではなくなったらサブゥーのほうからECWとの関係をおしまいにできる。
そこがメジャー団体と位置づけられるリングであっても、ちいさなインディー系のハウスショーであっても、観客に提供するレスリングそのものはまったく変わらない。ファイトマネーはそれを観にきてくれたお客さんたちからもらうものである。
シーク様からは“ステイ・バイ・ユアセルフStay by yourself(ひとりでいろ、群れるな)”と――耳にタコができるくらい――たたき込まれた。ドレッシングルームではムダ口をきかず、イスに腰かけ、白い壁をにらみながらきょうの試合のことを考えること。
観客と知恵くらべをして、みんなのイマジネーションのさらに上をいくイマジネーションにたどり着くこと。オリジナルの“自殺ダイブ”のレパートリーは、サブゥーをライヴで目撃した観客だけが持って帰れる記憶の財産。サブゥーは“小屋”のプロレスに一生を捧げる最後のアメリカ人レスラーのひとりになるだろう。
アメリカ、というよりも世界じゅうにもっとたくさんのリングがあったら、サブゥーは“魔法のじゅうたん”に乗ってどこへでも飛んでいく。“魔法のじゅうたん”の燃料は、サブゥーの自由な魂Free Spiritである。
※文中敬称略
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文/斎藤文彦 イラスト/おはつ1
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