門田博光はなぜ“一本足打法”にこだわったのか? ドラフト直前に歴代名打者を辿る
“世界のホームラン王”王貞治の代名詞といえば「一本足打法」。荒川博打撃コーチと二人三脚で完成させたこの打法で、彼は868本ものホームランを放った。しかし、現代のプロ野球界を見回すと王のような一本足打法を取り入れた打者がいなくなって久しい。そもそも王はなぜ、一本足打法でホームランを量産できたのか? 一本足打法は現代でも通用する打法なのか? ドラフト直前に、一本足打法に関わりの深い男たちの証言から、一本足打法を読み解いていく。
僕以上に本塁打に恋い焦がれた選手はいなかった ― 門田博光 ―
「投手が投げた球をスタンドに放り込んで、観客全員の目をひとり占めして僕だけが悠々とダイヤモンドを回る。そんな、時間が止まったような瞬間にどえらい快感があるんですわ……」 我々取材班の目の前で、69歳となった門田博光が目を細めてそう語る。通算本塁打の歴代1位が王氏であることは多くの人が知るところだろう。だが、その圧倒的数字ゆえに2位以下が語られることは決して多くない。1位の王氏(868本)に注ぐ2位は野村克也氏(657本)。そして、567本で3位に名を連ねるのがこの門田だ。高々と右足を上げて豪快にバットを振り抜く“フルスイング”こそが彼の代名詞だった。 「僕は身長170cmしかないんです。アマ時代は補欠時代のほうが長かったし、プロに入っても2番打者として考えられてましたから。それでも僕はなんとかスタンドに打ち込みたかった。どうすれば打球を遠くに飛ばせるか追い求めて追い求めて、あのフォームに辿り着いたんですわ」 門田が右足を高く上げるようになったのは2年目のこと。当時9年連続本塁打王だった王のバッティングフォームを参考にした。 「当時、無名の若手にはコーチは何も教えてくれません。“見て盗め”が当たり前の時代ですから全部が我流ですわ。王さんのように右足を長く上げて球を待つフォームを真似できなかったけど、右足を高く上げて、軸となる左足に力を溜め込む一瞬の“タメ”を作る王さんの型は『よく飛ぶな』と手応えを感じたんです。右足を上げて、タメを作って、“1、2の3”でバチーンとボールを叩く。理論を考える前に、バットを振りまくってできたのがこのフォームだったんです」 そうして臨んだ2年目に早速31本塁打を記録。だが「僕なりの打撃の型が完成したのはそれから6年後だった」と門田は語る。 「若手の頃は投手も舐めてかかってきますから、投げてくるのはストレートばっかりなんですよ。でもある程度打つようになると相手も警戒して、変化球をわんさか投げてくる。右足を上げて投手側に突っ込んでいくようにして打つフォームやから、タイミングが合わないとガタガタになるんです」1
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