「ドラフト1位」という壮絶な人生の記録――小田嶋 隆の机上のスポーツ論
週刊SPA!で連載中の小田嶋 隆のスポーツ書評コラム【机上のスポーツ論】より、今回は『ドライチ』をお届け!
「ドライチ」とは、「プロ野球ドラフト会議において1巡目での指名を得た選手」を指す。単純に考えれば、毎年12人ずつの「ドライチ」が生まれている計算になる。
歴史を振り返るに、一流選手の多くは「ドライチ」から生まれている一方で、すべての「ドライチ」がプロで通用しているわけでもない。むしろ多くの「ドライチ」は期待を裏切っている。本書は、そんな数あるドライチの中から、いまでもファンの記憶に残る選手たちへのインタビューを書き起こした好著だ。
取り上げられているのは、辻内崇伸、多田野数人、的場寛一、古木克明、大越基、元木大介、前田幸長、荒木大輔の8人。それぞれ入団後の活躍の度合いに多少の違いはあるものの、いずれもファンの期待を裏切った組の選手たちと言ってよい。
たとえば、古木克明は、’98年の横浜ベイスターズのドライチ選手だが、’03年に自己最多の22本塁打を記録したとき以外に特段の数字を残さないまま、’09年にプロを引退し格闘家に転向している。元木、前田あたりはそれなりの数字を残しているが、ファンの期待からは遠い。そのほか、辻内、大越、出場機会自体がろくに与えられなかった選手もいる。共通しているのは、8人が、故障や、メンタルの不調、チーム事情、メディアとの軋轢に悩みながら、それぞれに、自らの運命と全力で戦ったことだ。
「ドライチ」クラスの天才にしてなお、努力が報われるとは限らない。それでも、「ドライチ」は、自分たちの人生を悔いていない。苦い観察の後に不思議とさわやかな読後感が残る一冊だ。
【小田嶋 隆】
コラムニストやテクニカルライターとして活躍。最新著書に『超・反知性主義入門』(日経BP社)、『ザ、コラム』(晶文社)など

『ドライチ ドラフト1位の肖像』(田崎健太/カンゼン)
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『ドライチ ドラフト1位の肖像』 ドラフト1位で入団した選手たちの壮絶なルポタージュ
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