更新日:2022年11月20日 09:44
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「カシミヤ100%」表示は疑え 偽装し放題なアパレル業界の落とし穴

 食品、アルコール、化粧品、衣料品から住宅、建材に至るまで定期的に問題になる「偽装表示」。最近ではオーガニックシャンプーで知られるジョンマスターオーガニックの成分偽装表示が発覚したり、戦後日本の鉄鋼業界を支えた神戸製鋼の強度品質表示の偽装が明らかになった。こうした「偽装表示」はなぜ起こるのか。
カシミヤ

※写真はイメージです

カネをかけて検査してまで品質を証明する利点がない

 ファストファッションの台頭で安くて品質のいい高コスパ商品が当たり前となった衣料品。ファッションバイヤーのMB氏に偽装の実態を聞いた。 「食品同様で、中国産の生地を使って日本で裁断・加工・縫製がされれば日本製と書けますし、『イタリア製のレザージャケットだ』とありがたがっていても実は中国製のレザーだったなんてことも往々にしてあり得ます。逆に『中国製は粗悪だ』と言っても、日本製の素材を運んで工賃の安い中国の工場を使って品質の高い製品を作る場合もあります。過去に、ユナイテッドアローズなどの有名セレクトショップも産地偽装が取りざたされたことがありますが、そもそも産地はいくらでも偽装できるので、過剰に信頼せずに、特に縫製などは自分の目で品質を確かめる眼力を養ったほうが賢明かもしれません」  素材に関してはどうか? 「特に海外製の通販商材などは『カシミヤ100%』と謳っておきながら実際にはアクリルしか入っていなかった、なんてことも。実際どの程度カシミヤが入っているかといった混率を正確に調べるのは案外難しく、検査機関が人力で行い、費用も数万円かかるところが多いんですよ。ですから言ったもん勝ちな状況になっているのが実態です。『証明書』をつけて販売しているコートなどもありますが、その証明書も然るべき検査機関に発行を依頼しているわけですから、その費用は定価に含まれているわけです。ブランド側としては当然価格の訴求力が落ちるため、そこまでして証明書をつける意味はない。カネをかけて証明書をつけるよりは価格を抑えて利益が出るほうを選びます。だからこそ偽装を防止することもできないという構造なのです」  10年ほど前に中国産のカシミヤ製品のほとんどでカシミヤが使われていなかったことが発覚し大きな問題となったが、ここ数年では品質管理基準の甘いモンゴル産が多く流通しているのだとか。 「結局はイタチゴッコなんですよね」(MB氏)
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シーズンの途中で追加された「期中企画品」はリスクあり
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