20年前、片道4000円で超ガラガラだった東京湾アクアラインは800円になってこうなった
さて、片道4000円で発進した東京湾アクアライン、実際の交通量はどうだったか。1日平均1万台弱。つまり計画のわずか4割にとどまり、増加幅も牛歩であった。
私は開通3年半後(2000年)に、自著『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(講談社)にて、「アクアラインを1000円に」と提案している。1000円にまで値下げすれば、おそらく交通量は4倍程度に増えるだろう。料金収入は増えないが、それによって房総地域の経済は活性化し、東関東道や京葉道路の渋滞も減少。当時計画されていた第二湾岸道路も必要なくなって、1兆円レベルの建設費が節約できる。総合的に見ると非常に合理的という提案だった。
言っておくが、当時「アクアラインを1000円に」というのは夢のまた夢物語で、誰も相手にすらしてくれなかった。私も一種の理想論として主張したに過ぎなかったが、驚くべきことにその後下記のように段階的に料金が引き下げられ、現在では私の理想論をも超えている。
●2002年7月:4000円→3000円に。ETC利用の場合は2320円。当時の最大マイレージ割引率(13.8%)が適用されると実質2000円
●2009年3月:リーマンショック対策としての高速料金1000円上限制が、全国に先駆けて実施される
●2009年8月:森田健作千葉県知事の公約が実現、ETC利用の場合に限り800円に(料金はすべて普通車)
これで交通量はどうなったか?
2009年以降みるみる増加し、現在は前述のように1日約4万6000台。5倍弱にまで増えた。料金5分の1で5倍弱なので、料金収入は微減だが、木更津には大型アウトレットができ、高速バスを通勤の足とすることで宅地開発も進み、内房・外房の観光は活性化。東関東道や京葉道路の渋滞は大幅に緩和され、第二湾岸道路の建設はお蔵入りとなった。週末毎の大渋滞までは予想していなかったが、その他はほぼ私の予想通りになった。
高速道路は公共事業。広く国民の役に立つべく建設されるものだ。その有用性は料金で決まる。
取材・文・写真/清水草一
【清水草一】
1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中。2018年よりMJブロンディあらため永福ランプに改名。清水草一.com

―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―
1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中 1
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