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“格闘王”前田日明「『ヤッていいんだよ』というところだけが大きくなりすぎた」――最強レスラー数珠つなぎvol.16

――反論本として、『前田日明が語るUWF全史(上下)』(河出書房新社)を出版されました。 前田:当時のプロレス雑誌、プロレス新聞、全部持ってるっていう人がいたんですよ。その人もあの本を読んで、おかしいなと思っていろいろ論証しているんですけど。その人にも協力してもらいながら、実際にあの本に書かれていることを並べて、「本当の資料ではこう書いてあるのになんでこう書くの?」っていうのを、資料に基づいた上で作りました。今回の本に関して、反論はできないと思いますよ。 ――『1984年のUWF』は佐山史観で書かれていますが、私はあの本で描かれている前田さんもすごく好きなんです。ターザン山本さんの言葉で「金と女とクルマにしか興味のない人間」なんて、最高にカッコいい。 前田:カッコよくないでしょ。なに言ってんだ、お前? っていう感じですよ。けど、ターザン山本だったら言いかねないなと思って、本人に聞いたんです。「なんであんなこと言ったんだ? 俺の前でもう一回言うてみい」って。そしたら、「あれは違うんですよ。柳澤さんに『レスラーのイメージってなんですか?』って聞かれて答えたら、ああやって書かれたんです」って。じゃあ、全然違うじゃんっていう。 ――前田さんが思う、レスラーのイメージとは? 前田:俺が小学生くらいのときは、レスラーっていうと、生まれながらに神童と言われる人たちがやってる世界だと思ってました。神童とか怪童として生まれて、大きくなったら豪傑、みたいな。豪傑コースに乗った人たちの集まりだと思っていたから、山本なんかもそのイメージで言ってるんだろうね。実際はビビりもいるし、神経質な人もいるし、本当に豪傑みたいな人もいるし、いろいろですよ。 ――『1984年のUWF』の中で、とくに憤りを感じているのはどの部分ですか。 前田:「前田は試合毎に相手を怪我させて、勝手な試合をしてた」って書いてあるんですけど、じゃあ、だれが怪我をして、だれが休んだの? っていう話ですよ。あの本の中で、俺と開幕戦をやったダッチ・マンテルが俺に怪我をさせられて、その後、試合に出ていないって書いてあるんですけど、俺とも2試合目をやってるし、他の人とも何戦もやっている。  いまでもYou Tubeであの試合、見られるんですよ。踵が当たったように見えるんですけど、実際、踵なんて当たっていないんです。俺くらいの体重であの蹴りで踵に当たったら、歯が全部なくなるか、顎が折れるか。けどそんな人、だれもいないんですよ。たまたま藤波(辰爾)さんと試合をしたとき、藤波さんが避けそこなって切っちゃいましたけど。 ――1987年11月19日の「長州襲撃事件」のイメージが強いというのはあります。 前田:それを利用したんでしょ。それはまた全然別のシチュエーションがあるんですよ。それを無視して、事実だけを追って「だからこうなんだろう」って言われても、違うでしょっていう話です。歴史ってそうじゃないですか。答えが分かったような状況で「こうだろ、こうだろ、だからお前は悪いんだ」っていうのは、カンニングペーパーを見ながら試験をやってるのと同じでね。試験でもなんでもないじゃないですか。 ――新生UWFは、前田さんが解散を宣言した。理由はなんだったんですか? 前田:選手間の認識の違いですね。UWFという特殊な意味づけと、特殊なステータスの中で、みんなが飯を食えるようにしたんです。それで1年半やったら、もうこっちにいくしかなかった。半分くらいの選手はそれでもいいって言ってくれたんですけど、自分にとってUWFは家族のように思ってましたから。一人でも抜けたらそれはUWFじゃないんで、それで解散って言ったんですよね。 ――「こっちにいくしかない」というのは? 前田:UWFがやっているような、技術をもとにした試合の先にあるものはなにかと言ったら、もう総合格闘技しかないんですよね。日本人同士でえっちらおっちら、いつまでやってんだ? だったら外人とかいっぱいいるよ。それも、プロレスのプの字もつかないアマチュアの格闘家をどんどん入れよう。そういうことに抵抗がある選手がいたんですね。 ――総合格闘技を創設したのは、佐山さんなのでしょうか? 前田さんなのでしょうか? 前田:だれが創ったとかじゃなくて、そういうことを目指している時代だったんですよ。当時、盛んに言われていたのは、実践空手の影響で、なにが一番強いんだろうかということ。組めばいいのか、投げればいいのか、殴ればいいのか、蹴ればいいのか。みんなが、せーのでやったら、だれが一番強いのか。そうなると、ルールとして総合格闘技的になるしかなかったんです。  佐山さんはUWFにルールだとかいろいろ持ち込みましたけど、それはUWFという団体のためのアングルだったんですよ。簡単に言うと、言い訳のためにルールを作ったんです。「UWFって危険なんだよ、だからルールがいるんだよ」と。でも実際にやっているのはプロレスなんですよね。 ――格闘技において、ルールは大事ですか。 前田:ルールはすごい大事ですよ。ルール次第で、スポーツの見え方だとか、性格だとか、いろんなものが変わってきますから。ゲームだって、こうやったらキャラクターがこう動く、このボタンを押したらこういう攻撃をする。それが全然違ったら、違うゲームになるでしょ。それと同じですよ。ルールというのは、武術とか格闘技をゲーム化するために必要なものです。 ――UWFの色は、佐山さんが作ったルールによって決められた? 前田:UWFの色とかなんとかいうよりも、あそこに集まったメンバーですよね。彼らメンバーがいままで通りのプロレスをやっていくと、新日本プロレス、全日本プロレスと対比されて、だれからも注目されないんですよ。プロレスラーとして見ると、みんな小さいですし。どこにでもいるようなお兄ちゃんばっかりでしょ。でも集まった人間は、真面目にサブミッション・レスリングをやってきた人間ばかりだったので、じゃあそっちのほうを見せる方向に持って行こうと思ったんです。 ――お客さんは、サブミッション・レスリングを受け入れましたか。 前田:当時のお客さんは全然分からなかったです。それだけプロレスという業界に、力とステータスがあったんですよ。UWFは、それに立ち向かった団体なんです。 “格闘王”前田日明「『ヤッていいんだよ』というところだけが大きくなりすぎた」 ――前田さんのプロレス観をぜひ教えてください。 前田:プロレスはね、究極のアスリートスタントマンがやるメロドラマですよ。真面目にやるとこれほどキツくて危ないスポーツはない。でも手を抜けば、これほど楽なスポーツはない。両極端なんです。だから面白いんですよね。こっちの極端とこっちの極端が試合することもありますしね。  いまプロレスは活気を呈しているように見えるんですけど、昔と比べるとまだ低調なんです。昔は人口10万人くらいのところでも、3000、4000人、普通に入りましたから。ちょっと不況を脱したから浮かれちゃってね、スタントマンを飛び越して、サーカスになってるんですよ。だから危険なんです。スタントマンは、危険なことを危険でないようにやる。サーカスは、危険なことを危険にやるんです。
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前田日明の「強さ」とは
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前田日明が語るUWF全史 上

再び議論の的となっているUWFについて前田が全てを語る。格闘技プロレスファン待望の前田からの反論。全2巻1984~87年編。

前田日明が語るUWF全史 下

再び議論の的となっているUWFについて前田が全てを語る。格闘技プロレスファン待望の前田からの反論。全2巻1987~91年編。


■THE OUTSIDER 第50戦 ~有明ファイナル~
http://www.rings.co.jp/archives/7234
【開催日】3月11日(日)
【開場時間】14時00分(予定)
【開始時間】15時00分(予定)
【会場】東京・ディファ有明
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