お金

仮想通貨盗まれた男、編集部を訪れる――「お金0.0」ビットコイン盗まレーター日記〈第11回〉

エレベーターがハヤイ。そしてデカい。新宿警察署のすし詰めのエレベーターとは比べ物にならない。あの時僕は被害届を受け取ってもらえなかった被害者だったが、今日の僕は編集長に面白いと言ってもらえた被害者だ。つまり僕はビットコイン被害者界のエースだ。ずいぶん出世したもんだ。 10Fに到着し、編集部を探す。というか10Fが全部そうなのか。どっちに行けばいいんだろう。 電話がある。受話器を取りますか。 とる    ← とらない 女性「はい。こちらSPA!編集部です」 僕「あの、ぼ、僕、えーと、その、あ、出野と申します。スギナミさんとお話する約束があって…」 女性「打ち合わせということですね。少々お待ちください」 声がもう美人。いくらでも待ちます。 ガチャリンコ 女性「お待たせしました。ご案内します」 僕「ハ、ハイ!!」 編集部が、地元のボーリング場より広い。 女性「どうぞ。まもなくスギナミが参ります。少々お待ちください」 僕「はい!!」 あぁ、去って行く後ろ姿も美しい……毎日だって通いたい。見とれていると視界を遮るように長身のヒゲ男が現れた。 ス「はじめまして」 僕「は、初めまして!」 ス「今回出野さんを担当するスギナミです。よろしくお願いします」 僕「はい!出野です。よろしくお願いします」 ス「盗まレーター日記、面白かったです」 僕「あ、ありがとうございます…」 ス「初対面なので出野さんのこと色々と聞いてもいいですか?」 僕「お願いします!」 ス「それでは…」 自分自身について、こんなに丁寧に聞いてもらったのは生まれてはじめてかもしれない。「なぜこうなったか」から始まり、時には面白がりながら、時には同じ目線で寄り添いながら、話をドンドン引き出してくれる。話題がみるみる広がって、自分でも気づいていなかった脇の甘さに気付かされ、あっという間に2時間が経った。 ス「いやー、すごい面白いです。それにしても脇甘いですねぇ…」 僕「ありがとうございます!」 脇が甘いと言われてお礼が言えるようになった。エースの自覚ができてきた証拠だ。 ス「ところで今の困難をどう乗り越えるのか、それが気になって仕方ないです。家賃とか、カードとか。だいじょぶですか?」 僕「現状はどうしようもないです…けどなんとかなります!!」 ス「いいですね。楽しみにしています^^」 僕「はい!」 ス「では、まず第一話目を書いてみてください」 僕「はい!!!」 ——– —— —- ス 「Aさん。出野くんと2時間ほど打合せして、だいぶ感じがつかめました」 A 「おー。ありがとうございます。どうでした?」 ス 「おもしろいですね。荒削りですが、Aさんが言うように持ってると思います」 A 「デショ。持ってるんです。ただ、実力と勘違いしてすぐ図に乗るので、チャンスには去られがちです」 ス 「あー。でもまぁ若いときってそんなもんじゃないですか? Aさんも僕も」 A 「耳が痛くて気絶するから」 ス 「いずれにせよ、小遣い銭の投資ではなくて元手かき集めてオールインですから、これからもいろいろ起こることでしょう。原稿はAさんにもCCしてもらいますので、引き続きフォローしていただけると嬉しいです」 A 「リョカイ。彼の原稿を尊重しつつ、読みやすくなるようにちょっとだけ手を入れるようにします。で、連載の原稿料は全部彼にあげてください。今回のことで迷惑かけた親友さんや親御さんに、大きく恩返しをさせなきゃいけない」 ス 「了解しました」 A 「ダメ元で、やるだけやって様子みましょう」 次号へつづく
―[「お金0.0」]―
(いでの・たつや) 1994年、兵庫県生まれ。元かけだし俳優、高校卒業と同時に上京。文学座附属演劇研究所卒業後、エキストラ出演やアルバイト勤務を華麗にこなし、たまたま仮想通貨で得た大金を秒速で盗まれる。Twitterアカウント(@tatsuya_ideno
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