攻守の駆け引きが面白い!
この
距離感はもうひとつ大きな楽しみを観戦にもたらしてくれます。それが選手たちの「声」。ビーチバレーは2名の選手によるペア単位でチームが組まれますが、コートの広さはインドアより縦横1メートルずつ小さいだけの片面「8メートル×8メートル」のサイズ。それだけにひとり当たりの受け持ち面積は当然広くなり、相互の連携もより重要になってきます。そこで活きてくるのが相互の声掛けです。
ボールを追っている選手に、パートナーが的確に声を掛けて次のプレーを指示し、少ない人数で効果的なプレーを繰り出せるようにしているのです。
特に頻繁に声掛けが行なわれるのはスパイクを撃つ場面。トスを上げた選手は、スパイクを撃つ選手に対して「ブロックの有無」や「相手の位置取り」を声で伝えます。ブロックがないぞ、
フリーで撃てるぞ、というときは「ノーバディ!(ブロックがいないぞ!)」。
相手の守備の位置取りについては「クロス!(斜め方向が空いてるぞ!)」「ライン!(正面方向が空いてるぞ!)」などといった具合。ペアによってはコレを「右!」「左!」と日本語でやり取りするケースも。
この
声によって攻撃側の狙いがわかるという観戦時の面白さが生まれつつ、さらに守備側との駆け引きを楽しむことができるという面白さも生まれます。攻撃側が「右!」と声を掛けて右に撃たせようと 指示を出したところを見計らって、守備側プレイヤーが位置取りを変更したりするを見て楽しむわけです。
攻撃側A:「右!(右に撃て!)」
攻撃側B:「了解!右に撃つぞ!」
守備側A:「相手は右に撃つぞ!」
守備側B:「わかった、そっちに移動する!」
攻撃側A:「相手が動いた!やっぱ右じゃなくて左!」
攻撃側B:「もう遅いわ!!」
といった具合のぐじゃぐじゃのやり取りが始まることも。
「右……じゃなくて左!」と途中で変更するパターンや、スパイクを撃つ選手が指示を無視するパターン、守備側の選手が一度フェイクを入れてから反転するパターン、ブロックに跳ぶと見せかけて跳ばずに守りを固めるパターン、強打と見せかけてブロックを山なりに越えるフェイントなどもあり、
声と動きとで互いに揺さぶる攻防は見ている側も気が抜けません。
砂浜でのプレーであるうえに、ネットの高さはインドアと変わっていないことで、基本的に動きは遅く、ジャンプは低いのがビーチバレーの特徴。角度のあるスパイクをズドンと打ち込む場面は少なめです。しかし、そんな
一見するとデメリットである要素が、観衆も「駆け引き」を楽しめるゆったりとしたプレースピードにつながっており、いい効果をもたらしています。
各チームふたりしかいないことで、
攻撃専門・守備専門といったペア内での役割分担も難しく、それもまた駆け引きの面白さにつながっています。
たとえば石島雄介選手のペアとの試合では、インドアでもエースとして活躍した長身かつ強打が持ち味の石島さんをどうやって封じるかを相手チームは考えてきます。インドア的な考え方では、石島さんの強打を封じるには石島さんをサーブで狙い、スパイクへの準備時間を削るというのが基本線です。ところがビーチバレーでは、1チームふたりの構成ですので、サーブで狙った選手は1タッチ目のレシーブと3タッチ目のスパイクをやってくることが決まってしまいます。むしろ、2タッチ目のトスを受け持たせるように、強打の選手をあえてサーブで狙わないといった考え方も生まれるわけです。
そういった
「相手に何をやらせて、何をやらせたくないか」の意図がハッキリとプレーで示されるのも、ビーチバレー観戦の面白さと言えるでしょう。
駆け引きを堪能するという意味では、バレーボール以上に楽しみやすい競技です。
インドアなら高速で展開されるネット際の攻防を、じっくり楽しめるゆったり感
競技としては面白く、会場の雰囲気も最高なのですが、穴場感が強いのもいい感じです。この日の客入りは100人ちょっといったところ。身内と思しき人も多く、石島選手の奥さんでしょうか、試合中にずーっと「ゴッツ!ゴッツ!」と石島さんの愛称を叫んでいる人の姿も。
試合を終えた選手には知り合いが群がり、家族慰労会のような感じにさえなっています。
サインの求めに応じる選手、記念撮影に応じる選手、ついには「今日着ていた支給品のウェアをこの少年にあげたいのですが」なんて相談を選手が運営関係者に持ちかける一幕まで。
「絶対にメルカリで売るなよ」と言いながらウェアをプレゼントする光景は、とても微笑ましく、和やかなものでした。
この日は入場無料の大会だったこともあり、運営サイドもノンビリしたもので、パンフレットもグッズも用意がないとのこと。今ここで「選手生写真」が売ってあったらビーチリゾートの勢いで買ってしまいそうなところなのに、そういうのは一切ナシ。ただただ
みんなでビーチに集まって楽しく遊んだ……そんな雰囲気の大会となっていました。
競技終了後は選手がハイタッチで場内を一周するファンサービスも!
これだけ環境と内容がともなっていて、この穴場感というのは意外でしたが、やはり「バレー」というとインドアの6人制が思い浮かぶように、何となく二の次にされているのかもしれません。しかし、
インドアとはまったく異なる素晴らしい雰囲気があり、これからのシーズンにはピッタリの観戦体験です。
「インスタ映え」もめちゃめちゃしそうです。
ぜひこのまま東京五輪までのどかに進んでいってほしいもの。
日本勢だけでもこれだけのリゾート感が出るのですから、ブラジルとかキューバとかからの選手が集ったら、五輪ならではの「ワールドワイド」なリゾート感が出るでしょう。
マジョリティにはインドアのバレーボールを見ていただいて、穴場としてビーチバレーを狙っていきたいものですね。
選手が記念の寄せ書きをしたアイテムは水着! リゾート感強み!