更新日:2022年12月30日 10:26
お金

デフレとバブル、どっちが幸せ? 30年で中年男の働き方はどう変化したか

<’10年代の中年男>
バブル並みの賃金でも将来が不安。職場や家にも居場所なし
「ワークライフバランス」や「ダイバーシティ(多様性)」など、新しい働き方が提唱された’10年代。給与は’12年に底を打ち、その後は微増と、時代の閉塞感は依然変わらない。対して、堅調なのが預貯金。’14年以降、急激に増加している。こうした現状を中原氏は次のように読み解く。 「円安誘導政策のアベノミクスで物価が高騰、企業は内部留保を溜め込む一方で、バブル期のように安泰を保証するわけでもない。100年安心を謳う社会保障制度も信用できない。不安定な社会では貯蓄を優先するのは当然でしょう」  所得は’89年のバブル期と同等、あるいはそれ以上と驚きだが、「厚生年金の保険料の負担増に加え、通信費、生命保険料、教育費などのコストも増えているので、一般家庭の生活はカツカツな状態です」と、中原氏は指摘。また、前川氏は「新しい仕事観が浸透するにつれ、40代中年男は居場所を失いつつある」と警鐘を鳴らす。 「会社から求められる目標は高いのに、働き方改革で生産性も求められ、会社への忠誠心や仕事への満足度は低下しています。また、体育会系のノリ、上から目線の指示など、従来のやり方ではパワハラ・セクハラで『部下から訴えられるかも』と戦々恐々としている。その結果、閉鎖的に。放置しておけば、孤立する恐れがあります」  上司の威厳は失墜。優秀な上司かは部下が決める時代なのだ。
中年男[おじさん]の30年史

【図4・40代の預貯金の推移】’02年から節約志向に。「バブル期は賃金増加と終身雇用が後ろ盾となり消費を後押ししてくれましたが、今は保障と呼べるものが何一つなく、自己防衛するしかない」(中原氏)/金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」を基に作成

デフレとバブル、どっちが幸せ?

「賃金だけで考えるなら、右肩上がりの’80年代後半から最高点に達する’92年までですかね」とは中原氏。一方の前川氏は「’11年の東日本大震災を機に、“働くこと”が見直され、経済的な豊かさではなく、生きがいや働きがいといった精神的な充実さを重視する動きに。こちらの生き方も魅力的。これからに期待したい」と話す。  時流に振り落とされない適応力があれば致命傷は避けられそうだ。 【中原圭介】 経済アナリスト。未来予測に定評がある。金融機関や地方公共団体などに助言提案を行っている。著書に『日本の国難』(講談社現代新書)など 【前川孝雄】 人材育成コンサルタント。FeelWorks代表。「人が育つ現場」創りを支援。著書に『「働きがいあふれる」チームのつくり方』(ベスト新書)など <イラスト/なかむらはるみ> ― 中年男[おじさん]の30年史 ―
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