デフレとバブル、どっちが幸せ? 30年で中年男の働き方はどう変化したか
<’10年代の中年男>バブル並みの賃金でも将来が不安。職場や家にも居場所なし
「ワークライフバランス」や「ダイバーシティ(多様性)」など、新しい働き方が提唱された’10年代。給与は’12年に底を打ち、その後は微増と、時代の閉塞感は依然変わらない。対して、堅調なのが預貯金。’14年以降、急激に増加している。こうした現状を中原氏は次のように読み解く。
「円安誘導政策のアベノミクスで物価が高騰、企業は内部留保を溜め込む一方で、バブル期のように安泰を保証するわけでもない。100年安心を謳う社会保障制度も信用できない。不安定な社会では貯蓄を優先するのは当然でしょう」
所得は’89年のバブル期と同等、あるいはそれ以上と驚きだが、「厚生年金の保険料の負担増に加え、通信費、生命保険料、教育費などのコストも増えているので、一般家庭の生活はカツカツな状態です」と、中原氏は指摘。また、前川氏は「新しい仕事観が浸透するにつれ、40代中年男は居場所を失いつつある」と警鐘を鳴らす。
「会社から求められる目標は高いのに、働き方改革で生産性も求められ、会社への忠誠心や仕事への満足度は低下しています。また、体育会系のノリ、上から目線の指示など、従来のやり方ではパワハラ・セクハラで『部下から訴えられるかも』と戦々恐々としている。その結果、閉鎖的に。放置しておけば、孤立する恐れがあります」
上司の威厳は失墜。優秀な上司かは部下が決める時代なのだ。
「賃金だけで考えるなら、右肩上がりの’80年代後半から最高点に達する’92年までですかね」とは中原氏。一方の前川氏は「’11年の東日本大震災を機に、“働くこと”が見直され、経済的な豊かさではなく、生きがいや働きがいといった精神的な充実さを重視する動きに。こちらの生き方も魅力的。これからに期待したい」と話す。
時流に振り落とされない適応力があれば致命傷は避けられそうだ。
【中原圭介】
経済アナリスト。未来予測に定評がある。金融機関や地方公共団体などに助言提案を行っている。著書に『日本の国難』(講談社現代新書)など
【前川孝雄】
人材育成コンサルタント。FeelWorks代表。「人が育つ現場」創りを支援。著書に『「働きがいあふれる」チームのつくり方』(ベスト新書)など
<イラスト/なかむらはるみ>
― 中年男[おじさん]の30年史 ―
デフレとバブル、どっちが幸せ?
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