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タンカーが衝突した関西空港連絡橋の復旧には何日かかる? 高速道路マニア清水草一が予想

 関西地方を中心に猛威を振るった台風21号だが、高速道路マニアとして最も衝撃的だったのは、関西空港連絡橋(高速道路)にタンカーが衝突し、大きく損傷した事故である。高速道路が自然災害で被害を受けることはままあるが、日本では船が衝突して通行止めになったのは初めてだろう。

タンカー船が衝突した 関空連絡橋(NEXCO西日本発表資料より)

 橋を管理するNEXCO西日本は、翌日の9月5日から、被害のなかった上り線側を使って一部車両の通行を再開させたが、下り線側も含めた橋の復旧については、まだ「見通しは立っていない」としかアナウンスしていない。

9月5日時点では関空連絡橋のほかに関空道(泉佐野 JCT~りんくう JCT や阪和道(堺IC~和歌山IC )も通行止めになっている(NEXCO西日本発表資料より)

 実際のところ被害がどの程度か、まだそれすら詳細不明なので、復旧の見通しが立つはずはないのだが、高速道路研究家である私が映像や写真からの推測を述べてみたい。

まずはズレた橋げたの修復が必須?

 まず橋の被害だが、タンカーの衝突により、2つの橋げたが橋脚からズレ、なおかつ一部が折れ曲がるなどの損傷を受けている。  橋げたというものは、橋脚に剛結されているわけではない。地震国・日本では、橋げたを橋脚に剛結すると、揺れで橋脚まで損傷を受けることになるため、「支承」という支え部の上に橋げたを載せて軽く結合し、地震の揺れを吸収する形を取っている。

高速道路の高架橋も「支承」のみで支えられ、落橋防止装置(ワイヤー部)で橋が落ちるのを防いでいる

 が、橋げたはあくまで軽く結合されているだけなので、タンカーのような重量物が衝突すると支承が破壊され、今回のように大きくズレることもありうる。ただし、橋げたの落下を防ぐための落橋防止装置の設置は義務付けられている。  今回の事故では、橋げたそのものの損傷はそれほど大きくないように見えるので、とりあえずは橋脚の上に仮支承を設けて、そこにクレーン船等を使って橋げたを載せ直し、ズレを修正することから始めるだろう。まずは橋げたのズレを直さないと、橋の中央部を通っている鉄道が復旧できない。  鉄道さえ復旧すれば、道路は上り線を使っての対面通行でも、旅客をさばくことは可能になるはず。そうすれば、空港の復旧が可能になる。もちろん鉄道部の損害が軽微で、かつ冠水した滑走路など、空港施設の復旧が前提の話だが。

鉄道の復旧まで2週間、道路の完全復旧までは1か月と予想

 大きく損傷した下り線の道路部に関しては、支承を造り直して改めて据え付け、かつ損傷を受けた橋げた(鋼鉄製)の強度を確認して、必要なら補強し、タンカーの衝突で折れ曲がった端の部分は切断して継ぎ足すといった作業を経て、全面復旧にいたることになる。

首都高熊野町JCTの橋げたが、タンクローリーの横転火災事故で大きな損傷を受けた際には、橋げたの架け替え(交換)で全面復旧に73日を要した

 まったくの推測だが、鉄道の復旧まで2週間、道路の完全復旧まで1か月というところだろうか? 仮に橋げたの損傷が大きく、交換が必要となると在庫があるものではないので、もっと長い期間が必要になってくる。 取材・文/清水草一
1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中
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