カーマニアがクルマを買うのは「自分の割れた腹筋を鏡で見る」ようなもの
そんなわけで、フランス人も新型メガーヌRSの開発にあたって、日本市場を重視したとのこと。日本でもテスト走行を繰り返し、なんと「首都高のジョイントでガツンと来ないようにした」というのですから、首都高を愛する私は涙が出ます。
ただ、カーマニアが残念がるのは、先代は3ドアだったのに新型は5ドアになったこと、そして当面はAT車だけということです。「メガーヌよ、お前もか!」という感じです。
もちろん5ドアのほうが便利だし、MTよりATのほうが速い。実を取れば正しい方向性なのですが、カーマニアは心が狭いので、なかなか納得しないのです。
で、その走りはどうだったか。
速かったです……。
「4コントロール」という四輪操舵システムが、状況に応じて後輪も少し切ってくれて、電車がレールの上を走るみたいに自動的に曲がる! ガチにカーマニア向けのクルマが電車に似てしまったのは皮肉ですが、パワーも279馬力ですげぇ加速! 音もイイ! うおおおお~~~!
しかしまあ、実はカーマニアにとっても、実際の速さはわりとどうでもよくなっています。それよりも、3ドアのMTしかなくてニュルFF最速という、「硬派なメガーヌRS(先代)に乗るオレ」に萌えたのだと思います。
つまり、5ドアでATのラクチンで速い新型メガーヌRSに440万円出すならば、200万円しないスイフトスポーツ(スズキ)のMTに乗ってたほうが、ソンケーされるかもしれない。性能的にもホントはそれで十分だし。
結局カーマニアがクルマを買うのは、割れた腹筋を鏡で見るみたいに、「それに乗るオレ」に萌えたとき。性能じゃないのでした。
<結論>
いま、カーマニアに尊敬されるのは、「速いクルマではなく、つらいクルマ」です。古いとか、故障しそうとか、パワステがないとか、最低限「クラッチ踏むのってめんどくさいのにMT車に乗っててエライ!」とか1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中
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