更新日:2018年12月24日 17:21
スポーツ

「奈良判定」は健在!? アマチュアボクシングの今

~今から始める2020年東京五輪“観戦穴場競技”探訪 第67回~  フモフモ編集長と申します。僕は普段、スポーツ観戦記をつづった「スポーツ見るもの語る者~フモフモコラム」というブログを運営しているスポーツ好きブロガーです。2012年のロンドン五輪の際には『自由すぎるオリンピック観戦術』なる著書を刊行するなど、知っている人は知っている(※知らない人は知らない)存在です。今回は日刊SPA!にお邪魔しまして、新たなスポーツ観戦の旅に出ることにしました。  東京五輪を現地観戦すべく穴場競技を探している本稿としては、今回は若干の不安が残る競技の物見遊山です。今回取り上げますのはボクシング、いわゆるアマチュアボクシング。2018年は「奈良判定」「豪華なイス」などのキラーワードで世間を大いににぎわせた、あのアマチュアボクシングです。  このボクシングというのは、とかくプロとアマチュアの対立が激しく、日本国内はもちろんですが国際舞台においても両者はいがみあっています。五輪を頂点とするアマ側は、プロとして活動する選手を五輪からは締め出すことでアマチュアの権威を守ろうとし、「どうしても五輪に出たい選手」を囲い込もうとするわけです。  国際オリンピック委員会としてはプロにも門戸を開くように働きかけはするわけですが、アマ側は「わかった、では私たちが新しいプロ団体を立ち上げましょう」と斜め上の対応を見せ、引き続き従来のプロ団体で活動する選手に対しては事実上門戸を閉ざしたまま。プロ側も「五輪に出たら、もうウチの団体では試合できないようにするからな!」と選手への締め付けを厳しくするなど、両者和解への道はまったく見えていません。  さらに、そうした対立構造を抜きにしてもアマ側には問題が山積しています。アマチュアボクシングを統括する国際ボクシング協会(AIBA)はIOCから反ドーピングへの対応の遅れや不透明な財政面、アヤしい判定、買収疑惑などガバナンスの不備を指摘されており、しかも今年11月に就任した新会長は「ヘロイン売買に関わっている」という疑惑が持たれるいわくつきの人物で、もうしっちゃかめっちゃか。  日本ボクシング連盟が世間を騒がせた「不透明な財政」「奈良判定」「黒い交際」をさらにスケールアップさせたようなことを世界レベルでやっているのが現在のアマチュアボクシングなのです。なんか、こうなってみると日本ボクシング連盟前終身会長・山根明氏がやめようがやめまいが、もはやどっちみちダメだったんじゃないか説も出てきますね!  さて、世界の問題はさておき国内の問題は一応の収束を見せた今、アマチュアボクシングはどうなっているのか。日本アマボク界の頂点を決める全日本ボクシング選手権を視察し、ファンの熱気と、運営体制をチェックしていこうというのが今回の趣旨。  東京五輪から除外となれば完全に無駄足となりますが、最後まで希望を捨てずにいきましょう!

やってきましたはるばる水戸へ

駅前には子どもに見せられない雑誌を捨てるポストがあるなど、ガバナンスありそう

会場で受けた予想外のおもてなし

 わざわざ水戸の奥のほう、最寄のバス亭からも20分くらい歩く高校の体育館で開催されるという2018年の全日本ボクシング選手権。何でも、2019年の国体が茨城で開催されるということで、そのリハーサルを兼ねた大会なのだとか。地元のスタッフは運営の練習ができ、アマボク側は週刊誌とかゴシップメディアが戯れに覗きにこなくて助かるという一石二鳥の設定です。  何もない道をグーグルマップを頼りに歩いていくと、前方には警備服を着た人物が。「また問題でも起こしたのだろうか?」と警戒しながら近づいていくと、どうやらこの大会の警備員で道案内をしている模様。さらに道すがらには看板なども立てられており、思ったよりもウェルカムな雰囲気です。

おっ、何もない道路端でしっかり会場案内の看板が

ここで曲がれ、とアピールする看板と警備員

 会場に乗り込むと、そこには結構な「おもてなし」が。コンビニの出張所みたいな売店があったり、スポーツドリンクや炭酸飲料を無料で提供してくれる休憩所があったり、さらには地元のグルメを無料でふるまってくれる屋台まであります。買い物を忘れてきてしまった僕にもうれしいサプライズ。20分かけてバス亭付近のコンビニまで戻らずに済んだのはラッキーでした。

売店で来場者をおもてなし

フリードリンクで来場者をおもてなし

地元のグルメで来場者をおもてなし。この日は知らないキノコがたっぷり入った、地元グルメ・キノコ汁がふるまわれていました!

ボクシング競技の五輪存続を訴える署名活動も展開されていましたが、すごい威圧感のある受付だったので署名はせず

 おもてなしに惹かれたわけではないのでしょうが、会場となる体育館にはたくさんの観客が。フロア半面に並んだパイプ椅子は人で埋まり、さらに立ち見の客まで居並んでいます。観戦時のテンションは高く、パンチがクリーンヒットすれば「おおぉぃ!」と大きな声で客席がわきます。思った以上にボクシング熱というのは高く、昨今の不祥事によって萎える様子も見られません。むしろ、不祥事を乗り越えてきたことで逆に盛り上がっている感じさえあります。

結構きてるなー! 水戸のさらに奥だっていうのに

 この日は各階級の決勝戦が行われ、日本チャンピオンが決まる日。ないかもしれない東京五輪を目指して、日本のボクシング関係者も一堂に会しています。アマチュアボクシング界に新たな秩序をもたらした反山根派のみなさん、山根氏がいなくなったことでプロとの関係改善に期待を寄せる大橋ボクシングジム会長・大橋秀行氏、さらに自身がプロ選手・アマ指導者としてプロアマの垣根を越えて活躍した俳優の赤井英和さん、そしてJOCからはボクシング日本代表監督であるウラジミール・シン氏もご臨席。おまけに、NHKの中継解説を担当するのは、世界のスター・井上尚弥さんという超豪華な顔ぶれです!

井上“モンスター”尚弥さん、アマボク解説にご登場!

赤井“どついたるねん”英和さん、アマボク観戦にご登場!

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“疑惑の判定”を生むアマチュアボクシングの難しさ
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