将棋竜王戦「羽生が“無冠”なら称号はどうなる?」問題が勃発
羽生善治竜王と挑戦者の広瀬章人八段で争う将棋の第31期竜王戦七番勝負。3勝3敗で迎えた最終局の第7局が、12月20日、21日に山口県下関市「春帆楼」で行われる。
将棋7大タイトルのうち、最高の賞金額(優勝4320万円)を誇る竜王戦は、例年、注目度の高い棋戦として知られるが、今期はいつにも増して、将棋ファンからの高い関心を集めている。それは、タイトルホルダーの羽生竜王が勝てば、通算獲得タイトル100期という偉業を達成する一方、負ければ、91年以来、27年ぶりに“無冠”となるからだ。
「谷川さん(谷川浩司、光速の寄せで知られる十七世名人資格保持者)が無冠となって“九段”になったときも落ち込みましたが、羽生九段となったらそれ以上にショックな出来事です。かれこれ四半世紀以上、タイトル保持者として君臨してきましたからね」(53歳・男性)
将棋界では、同タイトルを複数期獲得すると、「永世◯◯」の資格を保持できる(竜王戦は連続5期もしくは通算7期、名人戦は通算5期、王位戦は連続5期もしくは通算10期、王座戦は連続5期もしくは通算10期、棋王戦は連続5期、王将戦は通算10期、棋聖選は通算5期)。昨年の竜王戦でタイトルを奪取し、史上初の“永世七冠”(7大タイトルのすべてで永世称号を獲得)となり国民栄誉賞を受賞した羽生竜王は、言わずもがな、記録づくめの棋士である。そのことから、「仮に竜王戦で敗れて“無冠”になっても、九段となるべきではないのではないか?」という声も、ファンの間からは漏れ聞こえてくる。
大山、中原、米長といった昭和の大棋士たちも、それぞれ無冠となった後に、大山康晴十五世名人、中原誠永世十段、米長邦雄永世棋聖といった特殊な称号が与えられていたが、それは、「成績や実績が抜きんでていて、九段とするには不適当」という別格の計らいがあってのこと。「羽生さんの実績をして、無冠となっても羽生九段ではなく、羽生善治永世7冠とするのが妥当」――というのが、その理由だ。
一方で、「大山、中原、米長の例は、引退間近の晩年だったからこその特例。羽生さんは現役の棋士。仮に永世7冠と名乗ったあと、またタイトルを奪取した場合はどうするのか? 現役の谷川九段が“十七世名人”を名乗らない以上、羽生九段となるべき。そもそも、羽生さんの美学的にも名誉称号は名乗らないだろう」との意見も見られ、思わぬ論戦が繰り広げられているのだ。
将棋界に詳しくない人にとってはチンプンカンプンな話ではあるが、今年最後の大勝負は、どちらに転ぶにしろ、異例の記録がかかった一局であることに違いはない。熱戦の模様は、ネット配信のほか、新橋SL広場前の無料の大盤解説会(21日18時~)でもリアルタイムで観戦ができる。歴史的一戦の行方に注目だ。<取材・文/日刊SPA!取材班>

通算獲得タイトル100期か27年ぶり無冠か
昭和の大棋士たちは名誉称号を名乗ったが……
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