大事なのはパワハラの定義ではない…日本体操協会パワハラ問題“残念な結末”に思うこと/鴻上尚史
― 連載「ドン・キホーテのピアス」<文/鴻上尚史> ―
体操の宮川紗江選手が、日本体操協会の塚原光男副会長と塚原千恵子女子強化本部長からパワハラを受けたと主張していた訴えは、認められませんでしたね。
第三者委員会の結論です。
ただし、「パワハラに準ずる行為はあった」というじつに微妙な表現がついています。
なんだか、ものすごく「和をもって尊し」とする日本的な結論だなあと、残念な気持ちになりました。
塚原夫妻による「配慮に欠け不適切な点が多々あった」けれど、「悪性度の高い否定的な評価に値する行為であるとまでは客観的に評価できない」ですと。第三者委員会の文章ですよ。
結果として、塚原夫妻は処分されず、一時職務停止が解除されます。
18歳の女性が、必死になって、自分の所属する組織の70歳と71歳の権力者に対して申し立てたアクションは実を結びませんでした。
ぶっちゃけ言うと、これが「パワハラ」じゃないなら、日本体操協会ではなんでも許されるんじゃないかと思います。
宮川選手は、合宿の時に塚原夫妻から個室に呼ばれました。
そして、暴力を振るった速見コーチとの関係をやめるように言われました。塚原夫妻は、宮川選手のためにそう指導したと言います。
その中では、宮川選手の速見コーチに対する態度を「家族でどうかしている、宗教みたいだ」と発言しています。また、「あのコーチはダメ、だから、あなたは伸びない」とも言いました。
「あのコーチはダメ。私なら100倍教えられる」と言われたと宮川選手は言っていますが、塚原夫妻はこの言葉は否定しています。
言ってないことにしないと、この問題は、「速見コーチからの引き離し」だけではなく、「塚原夫妻が経営する体操クラブへの引き抜き」問題になってしまうからです。
宮川選手は、速見コーチの問題だけではなく、あきらかに、移籍の強要だと感じたから、「パワハラ」だと記者会見したのです。

日本体操協会のパワハラ問題の残念な結末
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