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震災から8年…津波から45人の命を救った神社が再建へ

海のほうを見たら黒い壁が見えた

「揺れがおさまって30分ほどして海のほうを見たら黒い壁が見えた。津波が大きな松の木をなぎ倒すさまを見て、神社まで走りました。途中で子供を連れた女性が開けた場所に走っていくのを見たんですけど、恐怖で声が出ない。『そっちじゃない!』と言ってあげたかったのに……」  諏訪神社は避難場所に指定され、震災の3年前から避難訓練も行われていた。だが震災時、被災者を襲ったのは地震と津波だけではなかった。 「雪が降っていたうえに、避難してきた人の半分ぐらいは津波に巻き込まれてびしょ濡れでした。けど、神社の神殿は倒壊。拝殿は傾いていたので、外で救助を待つほかなかった。それで、壊れた神殿の木材を燃やして暖を取ることにしたんです」
諏訪神社

震災で傾いた拝殿はその後取り壊された 写真提供/竹添 武

 極寒の中、動ける人は被災者の救出活動も行った。同じく諏訪神社に避難していた前両竹区長の遠藤健さん(76)が話す。 「神社のふもとに津波で流されてきた瓦礫の中からうめき声が聞こえたんです。見たら女性がいたので、避難している人を呼んで、流れ着いたマットに女性を載せて神社まで運びました。後ほど聞いたら、1㎞以上津波に流されていた。津波にのみ込まれた瞬間に気を失ったから、海水を大量に飲むこともなく、神社のふもとまで流れ着けたようです」  中には、両足を骨折しながら避難してきた高齢者もいたという。余震におびえ、寒さに震え、痛みを堪え、空腹を感じることもなく夜は更けた。45人は雪の中、一晩を過ごしたのだ。 「自衛隊の人が救助に来てくれたのは夜中3時頃。『何も見えないから朝になったら避難所に移動する』と伝えましたが、『いいから早く避難しろ』と。無理にでも避難させようとした意味が後日わかりましたよ。原発事故が起きていたことなんて気づきもしなかった」(竹添武両竹区長〈71〉)
諏訪神社

現在の拝殿跡地。狛犬は震災直後に台座から転げ落ちたまま

 地震、津波、原発事故に加え、福島県民が風評被害にも悩まされたのはご存じのとおり。ただし、神社に避難した45人は今も散り散りになりながら、元気に過ごしているという。 「両竹地区の面々で大字会という会をつくり、毎年集まっているんです。高齢の方が増えてきましたが、今年も18人集まりました」(竹添武さん)
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諏訪神社の再建こそが復興のしるし
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