「給食を残す=悪」なのか? 小学校の「完食指導」で登校拒否も
「食べる食べないは本人の意思。楽しくおいしくが優先されない給食の時間は悲しい。残すのは絶対不可。こんなことが数十年来続いているんです」と親野氏は嘆く。
「食べ終わるまで席を立たせない」という指導は昭和の時代そのもので、食が細い児童は給食の時間が終わった昼休みの時間まで残されたこともあるというから驚きだ。
ここには学校教育の問題点が見え隠れする。教員の多くは「自分自身が家庭で受けた食事教育」「自分が小学生のときに受けた給食指導」を自身の指導に反映しがちだという専門家の調査研究論文が出ている。しかしながら、教員を志す大学生に「食育の授業」を施している大学は全国で4分の1程度。その矛盾が大きなひずみを生み出しているという。
「教師の多くは、始業の時間は厳しく守るくせに、終業の時間は守らないのが“教育界の不思議”です。1分の超過が“熱心な指導”と評価される風潮がある。給食完食指導もその一環と捉えられます。私の教員時代は平均20分の給食の時間を、25分は取るよう工夫をしていました。
給食の前の4時間目が体育や図工だと着替えや片付けがあって給食の時間に食い込んでしまいがちなので、授業の終了を早め、着替えや片付けを含めて時間内に終わる努力をして、給食の時間は確保するようにしたものでしたが」と、親野氏は、今の教師の、評価第一主義による、余裕のなさがこうした事態を生むひとつの原因と分析する。
Aくんは2学期になると、周囲からの助言などもあって多少の変化は見られたものの、担任教諭の「完食主義」は続いた。クラスメートの母親は「ウチの場合は2つ上のお兄ちゃんの2年前の担任だったので、給食を残さず食べさせる先生の指導法は想定済み。でも、事前の情報がないと、特に低学年の子は戸惑いますよね」と何年も前から問題の火種となっていたことを打ち明けてくれた。
給食の時間を恐れるようになってしまったAくんは、学校を休みがちになり、さらには拒食気味→うつ症状→体重減の悪循環に陥った。体重20kgだったAくんは、短期間で3kgも痩せた。成長過程の小学生には酷すぎる話だ。我慢の限界を超えたAくんの両親に対し当該教師は「そんな指導はしていません」とシラを切り続けたというから驚きだ。
「担任に訴えて解決に至らない場合は、問題意識を持っている学年主任の先生に相談するのがベストです。校長や教頭などの管理職は出世に絡む“事なかれ主義”で、児童を思いやる教員は少ないというのが正直な実感です」(親野氏)
思い切って、Aくんの両親は養護教諭に相談し、改善の兆しが見えた。母親は胸をなでおろす。
「保健室の先生に相談して担任の視線が届かない別の空間(保健室やフリー教室)で一緒に給食を食べてもらいました。安心して食べられる環境を整えてもらうことで、Aの出席率は大きく回復しました」

登校拒否や拒食症、うつ気味で体重も減少
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