「給食を残す=悪」なのか? 小学校の「完食指導」で登校拒否も
学校では、全学年の給食を調理する「給食室」が、ある一定期間、クラスごとの給食の残飯量をチェックして「すっからかん賞」「もうひといきで賞」という表彰をしているという。「代々伝わる小学校の伝統」で、明確に完食を推奨しているものではないようだが、こうした「賞」の存在が担任にプレッシャーをかけたとも考えられる。
3学期になると、養護教諭や学年主任の指摘が効いたのか、担任の対応には改善が見られたという。穏やかに給食を食べられるようになったことはAくんやクラスメートにとって吉報だったが、担任の態度が改善したあとも、給食を残した児童に対して「早く食べろよー」「ちぇっ、残してんなよ!」とクラスメートが舌打ちするなど、今度はいじめが始まったのだ。
「完食主義」の価値観を刷り込まれた子供たちは、「給食を残す=悪」という思考に陥り、教師ではなく生徒が「相互監視」をするような状態になっていったという。
親野氏はこう指摘する。
「“密室の子供の中に大人がひとり”という圧倒的な権力で学級王国が築けてしまう体制こそが最大の問題点です。私は教育予算を増やし、教員数を増やすことを提唱し続けていますが、それは学力差に加え、個人差にも対応できるからです。欧米では担任に加えてアシスタント教師がいる複数担任制が一般的。どんな会社でも組織の弱みには予算を割き強化します。『しっかり教えろ』という抽象的な精神論ではなく、教育予算を増やし教師の数を増やせば、Aくんのような苦しみはなくなるはずです」
’17年5月~’18年9月、この問題に取り組む支援団体には、小中学校で教員に給食の完食を指導されたせいで不登校や体調不良になったとの相談が延べ1000人以上から寄せられた。完食指導が訴訟に発展した例もあり、事態はより深刻化の一途を辿っている。
<取材・文/小島克典(スポーツカルチャーラボ) 写真/PIXTA>
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