更新日:2019年08月28日 19:25
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自衛隊員には失業保険がない。身体を壊して無収入になる悲劇

自衛隊という仕事に付随する「身体負荷」というリスク

 さらに、自衛官は体力的にも危険が伴う、時には我が身を顧みず動かねばならない職業です。ゆえに、訓練中や仕事中の事故などで体に不調を起こすようなことも起こります。しかし、重大な事故や病気になった場合、残念ながら自衛隊で仕事を続けることは難しくなります。次に紹介するのは元自衛官から聞いた事例です。
防衛省・自衛隊Twitter

防衛省・自衛隊Twitterより

 彼は夏の暑い日に訓練で重い荷物を運んで長時間歩き続けた後、筋肉繊維が壊れて力が入らなくなってしまいました。脱水症状が引き金になって起きる「横紋筋融解症」という病気です。しばらく療養した後、上司は辞めなくていいと言ってくれたのですが自衛隊での仕事ができる状態に復帰するとは思えなかったので自ら退職したとのことです(彼の場合は結果として退職後に健康を取り戻し、現在は元気に過ごしています)。自衛官は身体能力を問われる職種なので体力検定などで常に健康かどうかを問われます。そのまま残った場合に部隊の人たちに迷惑をかけるのではと悩んだようです。  自衛隊ではこのような場合、辞めろと言われることはないのですが、現実には体が健康でないと自衛隊では配置されるべき仕事がないのです。仕事で健康が損なわれて休職する場合は「俸給の百分の八十を支給することができる」とありますが、一定期間後には無給になります。結局、「辞めろ!」とは言われなくても結果的に「辞めるしかない」ということになるのです。公務災害が認定されれば少し様子は変わりますが、公務災害認定のハードルは高く、認定されることは難しいようです。  このように自衛官は一般の公務員よりも危険物を取り扱うことも多く、体に負荷のかかる仕事も多く、必然的に失業リスクは高くなります。それなのに一般の公務員と同じ扱いでいいのでしょうか?  自衛官になろうという人は自分の損得など考えず、国防のためにその貴重な時間を費やしてくれる存在です。そういった崇高な心を持ち我慢強い隊員たちが文句を言うはずがありませんから、外にいる私たちが気にかけてあげないといけないと思うのです。
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定年退職する自衛官の再就職時にも失業保険を期待できない
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おがさわら・りえ◎国防ジャーナリスト、自衛官守る会代表。著書に『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)。『月刊Hanada』『正論』『WiLL』『夕刊フジ』等にも寄稿する。雅号・静苑。@riekabot


自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う

日本の安全保障を担う自衛隊員が、理不尽な環境で日々の激務に耐え忍んでいる……


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