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映画版『空母いぶき』は「三流役者」ならぬ「三流映画」だった/古谷経衡

映画版『空母いぶき』は原作とは似ても似つかないもの

 そしてこのカレドルフがどんな政体で、どんな人種構成で、どんな歴史を持った国なのかの説明は一切ない。この時点で本作の高度なポリティカル群像という側面は形骸化し、映画としてのリアリティはゼロだ。  いろいろな方面に忖度したのだろう。実際、麻生幾原作の映画『宣戦布告』(’02年)も、北朝鮮の武装工作員の国籍は北朝鮮ではなく「北東人民共和国」という架空の国家に変更されていた。では、軍事的描写はどうかというと、「いぶき」の僚艦の艦長が「本気になると関西弁になる」という設定で、主砲を発射するたびに「いてまえ!」と絶叫するという、頭痛がするシーンの連続。  さらにお決まりのごとく挿入される反戦平和のメッセージ。要するに映画版『空母いぶき』は原作とは似ても似つかないものであり、点数にすると0点。これなら自衛隊が怪獣や宇宙人と戦ったほうがずっとましで、その意味で庵野秀明監督の『シン・ゴジラ』(’16年)の秀逸さが際立つ。 「総理大臣として成長するさま」として垂水総理役に抜擢された佐藤浩市氏は、演出の稚拙さゆえに、「成長していくさま」が描かれておらず、俳優の配役はすべて製作者の児戯に等しいレベルの低さによって陳腐化されている。こんなふざけた邦画を見るのも久しぶりで、国内は当然だが、到底海外にお見せするような完成度には至っていない。それでも観たければ、2時間超の拷問を受ける覚悟でお好きにどうぞ。
(ふるやつねひら)1982年生まれ。作家/文筆家/評論家。日本ペンクラブ正会員。立命館大学文学部史学科卒。20代後半からネトウヨ陣営の気鋭の論客として執筆活動を展開したが、やがて保守論壇のムラ体質や年功序列に愛想を尽かし、現在は距離を置いている。『愛国商売』(小学館)、『左翼も右翼もウソばかり』(新潮社)、『ネット右翼の終わり ヘイトスピーチはなぜ無くならないのか』(晶文社)など、著書多数
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