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カラテカ入江が失敗した“人脈力”のワナ「付き合う相手を選ぶな」etc.

③「与えられたキャラを受け入れる」のワナ

 こうして、分け隔てなく人と付き合い、汚れ仕事もすすんでこなす。そんな入江流の処世術は、他者と自分の力関係を正確に把握することで成立していた。彼はグループから与えられた“キャラ”を、喜んで受け入れていたのである。 <仲のいい友だちといるときや、ひとりでいるときと同じ自分で会社にいられたら、周りの人は迷惑です。(中略)与えられたキャラがものすごく苦痛で、会社に行きたくなくなるくらいに違和感があるのは問題かもしれませんが、「元気」「しっかり者」「天然」など、たいていの人はそれを受け入れ、自分の中でバランスをとっているのだと思います。>(pp.104-105)  これには強く共感する読者も多いのではないだろうか。ここだけを取っても、入江がただズケズケと土足で踏み込んで、知り合いを増やしていったのではないことがよく理解できる。  ただし、こうした振る舞いにこだわるあまり、犯罪集団との付き合いでも律儀にキャラを演じていたとしたら、なんとも皮肉な話だ。
のしあがる力 カラテカ入江

昨年出た最新刊『入江式 のしあがる力』(ゴマブックス)

「人を紹介することが喜び」で犯罪集団に紹介しちゃった…

 そういうわけで、『使える!人脈力』には、この他にも取り立てておかしなことは書かれていない。新入社員の教材に使いたいと思う企業があっても不思議ではない。  だが、同時に本書にはネガティブな発想やマイナス思考が全く介在していないことにも留意したい。入江の情熱は、正しく、好ましく、純粋な善に100パーセント向けられている。 <人を紹介することが、僕の喜びでもあります。それがきっかけで僕のまったく知らないところで、ビジネスになっていたり、親友といえる人に出会えたり。>(p.204)  こう語った入江の気持ちにウソはないはずだ。  だからこそ、たどり着いたゴールが振り込め詐欺グループだったことに、やり切れなさを覚える。大局を見失い、純粋で懸命な心がけを信じすぎたことが凡庸な悪を生んだのだとしたら、あまりにもベタなオチだと言わざるを得ないからだ。 <文/比嘉静六>
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