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発達障害の東大卒サラリーマン「東大には僕みたいな子が集まってた」

東大には発達障害の当事者が集まる?

発達障害

※写真はイメージです

光武「内田さんはなにか強いこだわりありました?」 内田「あった、あった(笑) 僕の場合はベタだけど電車だったよ」 光武「てっちゃん!確かにベタです」 内田「そうそう、王道のベタなんだよ。僕の場合、京急線が特に好きでね。JRには惹かれないのだけど、なぜか京急線には惹かれるんだよ」 光武「あーでもちょっとわかります。京急線、2100形の赤い色が好きです」 内田「ははは、あの赤い感じが好きなんだ。僕も新1000形、もちろん旧1000形もいいよね」  この後、僕はしばらく内田さんと電車トークで盛り上がりました。ASD傾向の強い方は特定のものに対する強いこだわりがあります。その意味ではヲタクと発達障害は親和性が高いだろうなとひそかに感じています。秋葉に行くと自然と落ち着くのは、僕自身の特性を受け入れる空気感があの町にあるからなのかもしれません。 内田「大学は光武さんこっちだよね?」 光武「そうです。内田さんは件の国立大でしたよね?」 内田「そうそう。東京アスペルガー大学なんて言われてるようで笑っちゃうけどね」 光武「通ってみて実感ありました?」 内田「そりゃあね(笑) 特定のものに対する強いこだわりのある人が多かったよ。ただ勉強はそつなくこなすバランスタイプも多かったかな。もちろん、一点突破型もいたけど、東大の入試がバランスタイプ向きだから、僕みたいなタイプが集まりやすいかなって思うよ」 光武「たしかに東大の入試問題は強烈なメッセージとバランス感の両方がありますからね」 内田「僕らの強いこだわりが勉強に向けば、そりゃあ点数は取れるよね。しかも、ADHDの型にはまらない思考は学問的な意味で新しい研究に向いているしさ、ASDのまじめさは地道な基礎研究にぴったりだもの。東大に発達障害の当事者が集まるのは自然なことだと思うよ」 光武「内田さんは東大でよかったと思います?」 内田「それは間違いないかな。早稲田や慶應なんかにも同じことがいえると思うんだけどさ、やっぱり幼少期から変わった子として扱われることが多いじゃない? 僕らって。でも東大だと、だいたいみんな変わった子として扱われた人が集まるんだよね。だから、世間的に言えばマイノリティが、特殊な環境ではマジョリティになるんだって初めて実感したんだよ。僕にとって東大は初めて自分を肯定できた環境だったように思うな」 光武「そうですね。強烈なこだわりをその人独特の個性にできるのは、許容する環境があってこそなんでしょうね。僕もブラッツの営業をやって近いことを感じます」 内田「ははは、今日は話し込んじゃったね。光武さんの過去の話も聞けたしお腹いっぱいだから、休憩がてらちょっとタバコ吸ってくるね」 光武「いってらっしゃい!」  強いこだわりがあってもそれを許容する環境があれば活躍することができる。内田さんの生き生きとした表情を見ていると、僕らの未来は明るく輝いていると確信できます。確かに、内田さんのようなケースはレアなものだといえるかもしれません。でも、多様性を受け入れるブラッツという場所も出来、少しずつですが状況が改善していけば、彼のようなケースは増えてくるはずです。僕の子供(いたらの話ですが)の世代には、その割合が増えるように、今日も元気に営業をしていこうと思います。  本日はご来店ありがとうございました。ではまた次の営業で。 *お客側の登場人物はプライバシーの問題から情報を脚色して掲載しています。 <文/光武克 構成/姫野桂 撮影/渡辺秀之>
(みつたけ・すぐる) 発達障害バー「The BRATs(ブラッツ)」のマスター。昼間は予備校のフリー講師として働く傍ら、‘17年、高田馬場に同店をオープン。’18年6月からは渋谷に移転して営業中。発達障害に関する講演やトークショーにも出演する。店舗HP(brats.shopinfo.jp) ツイッターアカウント「@bar_brats
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※ユーチューブチャンネル「ぽんこつニュース」でも光武さんが発達障害バーの日々を配信中

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