仕事や家庭などさまざまな場面で感じる「生きづらさ」が日本人に蔓延している。30~55歳までの男女2000人を対象にしたアンケート調査でも64.5%の人が生きづらいと感じている現代社会。もはや国民病とも言える、その病理に迫る!

「生きづらさ」とどう向き合うべきか?
「生きづらい病」を抱えた人は、どう折り合いをつけるべきか?
「まずは生きづらい理由を整理し、理解すること。そのうえで自身が悩まされている気質や障害、疾患について詳しく知ることです。そこから特性を生かせる働き方や生き方を模索できたり、治療するための対策を考えていけたりと第一歩を踏み出すことができます」(HSP専門カウンセラー・みさきじゅり氏)
※HSPとは?…「ハイリー・センシティブ・パーソン」の略。感覚から得た情報を処理する神経が敏感で、刺激や他人の感情に過敏に反応してしまう特性を持つ
HSP当事者である川村博行さん(仮名・40歳)も、カウンセリングを受けながら自身のHSPの特性と折り合いをつけている最中だ。
「社会人時代はいっぱいいっぱいで気づきませんでしたが、今は相手の感情や細かい表情の変化に気づけるHSPの特性は1対1のビジネスに役立つスキルだと感じています。特性がデメリットだけじゃないと思えるようになって心が軽くなりました」
HSPに限らず「他者との比較をやめ、環境やペース、適性など自分にとって働きやすい環境を自分で選んだという仕事に対する肯定感が重要」(みさき氏)だという。

また、多くの日本人が生きづらさの理由として直面する“対人関係でのつまずき”。精神科医の西脇俊二氏は、「専門医にかかるまでもなく、対人関係を良化させるコツは3つしかない」と断言する。
「1つ目は『他人に期待しないこと』。対人関係でつまずく理由の多くは、他人が思ったとおりに行動してくれなかったり評価してくれないことがストレスになり生まれるもの。自分自身は変えられても他人の感情や思考を変えることはできません。他人にはとことん期待せずにいたほうが、心穏やかに生きられます。
そして2つ目は『自分にも期待しないこと』。自分には“できること”と“できないこと”があることを理解し、『うまくいかないことがあっても当然』と考えて落ち込まないようにする。もちろんすべてを諦めるのではなく、“できること”のスキルを伸ばす努力は不可欠です」
他人にも自分にも期待をするからこそ、うまくいかなくなったときに生きづらさを感じてしまう。
これら2つを踏まえたうえでもっとも重要なのが3つ目だ。
「最後は『他人の承認欲求を満たしてあげること』。承認欲求は誰しもが持ち、飢えているものですが、それを意識的に『他人に与えよう』と考えている人は非常に少ない。これが生きづらさが蔓延するひとつの理由とも言えます。自分の承認欲求を満たすことばかり考えるのではなく、意識的に他者を褒めたり認めることで周囲の人の承認欲求を満たすことを考える。そうすることでおのずと人から求められるようになり、自分の承認欲求も満たされることに繋がります」(西脇氏)
言わばこの3点は対人関係の核だが、こうした意識改革はすぐに実践できるものではない。「まずは2週間から1か月。メモに書いて貼ったり、スマホの待ち受け画面に書き込むなど、ことあるごとに思い出し心がければ、徐々に思考法が身につきストレスが軽減する」(同)という。
つかみどころのない“生きづらさ”に悩まされ続けるのではなく、その理由を知ったうえで対策を実践することが、一番の近道なのかもしれない。

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