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転職者が面接で見せたのは他人の作品? 性善説で採るお人好し日本企業

「採用側は性善説で人を見ます。でもそれに限界を感じることもありますね」と複雑な表情を浮かべるのは、アパレル会社の人事部に所属する筒井弘明さん(仮名・38歳)。
面接

写真はイメージ(以下同)

 彼はこれまでに、多くの求職者と向き合ってきた。その中には、困った人間もいたそうで…。

ポテンシャル採用に失敗…他人の課題を提出?

「デザイナー職の求人募集をした時の話です。ウチは経験や実績よりも、その人のセンスを評価するいわゆる“ポテンシャル採用”で人を集めています」  この募集には経験者から、実務経験はないが大学や専門学校でデザインを学んだ経験のある人まで、多くの応募があったそう。面接では、経験値にかかわらず、自らがデザインした作品の提出を必須にしたという。 「最終的に数人に候補を絞り、30歳の女性を採用することになりました。20代のほとんどを違う業界・職種で過ごしていて、前職では1年ほど、アシスタントデザイナーをしていたとの話でした。でも、課題で提出した作品はとても優れていて、センスがあるとデザイン部の責任者が太鼓判を押していました」  ところが採用後にある疑惑が浮上。その女性が他人の作品を提出したのではないかというものだった。 デザイン 「デザイン部に配属になってから、デザインの能力がないとわかったんです。それどころか、基本も習ったことがないのでは? と現場が思うほどだった。線を引くのもままならないと聞きました」  欧米企業では「リファレンスチェック」といって、中途採用で現職・前職の上司などに「彼・彼女の能力はどの程度か」を問い合わせることが普通に行われる。日本でも、本人の同意があれば個人情報保護法に違反しないのだが、いまだ「自己申告」を信用している企業が大半だ。  そこで筒井さんとデザイン部の責任者で、彼女と面談をすることに。「あの作品は別の方のモノなのではないか?」と問い詰めたそうだが… 「彼女の言い分は『あれは私の作品です』とのことでした。デザインに関して素人なのではないかと追及しても、『職場環境が悪くて、思うように仕事ができない』といった主張をしてきたんですね…。  デザインには疎い私に代わり、責任者が技術面について理詰めで追及しても、感情的になるばかりで話にならない。最後は『私が集中できる環境を作ってくれ』の一点張りでした」

処分は下せず、アシスタントとして勤務させることに

 これまでにも職歴詐称が疑われる人間は多くいたそうだが、そのほとんどがあっさりと嘘を認めて謝罪した。悪質性のある場合は解雇などの処分を科してきたと話す筒井さん。  しかしこのときは女性が自らの非を認めなかったため、処分等の決定を先送りにせざるを得なかったそうだ。 デザイナー「採用の時に他人の作品を提出したのではないかというのは、あくまでも疑惑ですからね。彼女の前の会社に問い合わせ、在籍時の勤務状況や能力を訪ねることも考えましたが、個人情報の管理にうるさいご時世ですし、疑惑の段階でそこまでするのは…との意見もあり、止めることになりました」  面談後、数週間は様子見をすることに決定。だが、やはりデザインスキルに疑問を抱かずにはいられなかった状況だったため、筒井さんの会社はある決定を下すことにした。 「会社側としては、仕方がないという結論になりました。一から仕事を教えるということです。先輩の仕事を手伝いながら学ばせる、アシスタントデザイナーの立ち位置ですね。センスを評価しての中途採用のはずが新入社員と全く同じ扱いになり、会社としては大誤算でしたが…」
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嬉しい誤算もあったが…突然の退職理由
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