更新日:2020年04月20日 14:11
お金

1兆円超えの大赤字…ソフトバンクはヤバい会社なのか?

変わった会社ソフトバンクを知るキーワード2「群戦略」

 もう一つ、ソフトバンクを知るためのキーワードとして「群戦略」という企業戦略を紹介します。群戦略とは、「それぞれの技術分野で進化のNO.1を走る企業に、(できれば)筆頭株主として20~30%の株式を持ち、ソフトバンクと共に大きく成長していくという組織体のあり方」のことを指します。わかりやすく言えば、将来大きくなるベンチャー企業の株式を早めに買って、成長とともにソフトバンクも一緒に儲かる仕組みをつくる戦略のことです。  早めに家族になっておくファミリー戦略と理解すればわかりやすいかもしれません。ただし、誰でも家族に迎え入れるかと言えばそうではありません。ソフトバンクがファミリーとする対象は、各業界のNO.1企業。先述したアリババ、ヤフー、アームはすべて業界NO.1です。  ポイントはこれらの企業の株式を100%持たないこと。あくまで、筆頭株主として20~30%の株式を持つことで、支配・管理するのではなく、極めて柔軟なグループ経営を維持しているのです。ここが三菱や三井、住友などの財閥グループとの違いです。    ソフトバンクグループは、子会社ではなく、家族を増やしたいのです。今後、ソフトバンクが出資する企業は、どれも買収ではなく筆頭株主であることが多いことに注目してみてください。この群戦略を理解すると、ソフトバンクグループが今後より投資会社として力を入れていくことが理解できると思います。この動きは、今後もより加速していくでしょう。  孫社長は、第38回定時株主総会で「この十数年間は(略)、97%くらいは通信事業の運営に投入し、3%くらいの時間を投資のほうに使ってきた。投資によって20兆円くらい成果を得た」と語っています。そして今度は、97%を投資のほうに費やすと述べています。  つまり、ソフトバンクと聞いて上戸彩さんを思い浮かべるのは、全体の3%のほうにすぎないのです。これは、横浜と聞いて、みなとみらいを思い浮かべる人と一緒かもしれません。横浜は都筑区、港北区などを中心とした首都圏通勤者のベッドタウンであり、高台も多い地域。「海沿いの道を手をつないで歩いた」桜木町は、横浜の面積の3%以下です。ソフトバンクのイメージも、実態と大きく違うんですよね。

「そんなに投資して大丈夫?」にズバリ答えます

 ということで、ソフトバンクグループが投資会社である所以をその“変人ぶり”から理解できたのではないでしょうか。しかし、ここで一つの疑問が浮かびませんか? 「そんなに投資して、大丈夫なの?」  そう思うのも無理はありません。というのも、今SVFが投資しているある企業が“大炎上”しているからです。それがワーキングスペースを提供するWeWorkです。  WeWorkは一時、企業価値が約5兆250億円(470億ドル)と見積もられている企業でした。しかし、2017年、2018年と営業損失が倍増し、黒字化のめどが立たないことから、IPOが延期されました。問題となったのは、創業者で大株主のアダム・ニューマン氏が保有する株式をIPO前に売却したことです。  なんと、そこで彼が手にした額は約750億円(7億ドル)。これを受けて、SVFは投資先の創業者を見抜く力や投資手法全体が疑問視されたのです。  これまで、WeWorkはAIテクノロジー企業として注目を集めてきました。しかし、同社はオーナーから借りた物件に付加価値を付けて転貸し、高い賃料で貸出すというビジネスモデルであることが詳らかになっています。孫社長は今回の投資は失敗だったと認めています。とはいえ、同社の救済を行い、ここから再建していくと述べています。  WeWorkは今後、財務が健全化した先に、前述したソフトバンクグループが群戦略としてファミリーとして名を連ねている企業と連携することで、再びAIテクノロジー企業としての道を歩む可能性が残されています。  つまり、WeWork単体では“ヤバい”ですが、ソフトバンクグループの他の企業の強みを活かすことで、この先に光がないわけではないのです。  次回は、さらにこれまでのイメージを覆すソフトバンク像に迫っていきます。
経済アナリスト/一般社団法人 日本金融経済研究所・代表理事。(株)フィスコのシニアアナリストとして日本株の個別銘柄を各メディアで執筆。また、ベンチャー企業の(株)日本クラウドキャピタルでベンチャー業界のアナリスト業務を担う。著書『5万円からでも始められる 黒字転換2倍株で勝つ投資術』Twitter@marikomabuchi
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