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渡部建がグルメと音楽を語ることへの違和感

生理的欲望を隠さないのは動物と同じ

 渡部建はポップミュージックをも語る。音楽番組の司会者を務め、司会だけではなく音楽の良し悪しにまで言及する。私も売文で糊口をしのぐために様々な分野について図々しく言及しているが、音楽を語るのだけは、足がすくむ。ポップミュージックの「黒帯」達の姿が目に浮かぶ。音楽は他の芸術と比べ「感性」に負うところが大きく、容易に自分の「聴く耳」に自信が持てない。下手すれば大火傷してしまう。それがポップミュージックの評論だ。渡部建は最も繊細な「虎の尾」を二本も同時に踏んでいる。天然の「無自覚過剰」の人物らしい。  私の母の「食べ物に対する執着を見せるな」という教えは、「世界には飢えた人たちもいる中で、食べ物のことなどを語るな」ということと「生理的欲望を隠さないのは動物と同じだ」、そういう意味だと私は解釈している。セックスをやたらに語らないし、その記録をつけたりしない。だから食べることについてもそれはしない。人間の生理的欲望は「食べること」「セックスすること」の2つだけだ。  不倫しようが何しようが他人の色恋沙汰に興味はまったくない。しかしグルメを語るなら、複数の不倫相手との情事も「グルメレポート」した方が、行動の整合性は取れているってもんだ。しかし渡部建はスキャンダルが発覚する前に活動自粛を発表するという前代未聞の手法をとった。「報道されている以上のもっとエグいことをもみ消したんじゃない?」なんて邪推してしまうけれど。
1968年生まれ。構成作家。『電気グルーヴのオールナイトニッポン』をはじめ『ピエール瀧のしょんないTV』などを担当。週刊SPA!にて読者投稿コーナー『バカはサイレンで泣く』、KAMINOGEにて『自己投影観戦記~できれば強くなりたかった~』を連載中。ツイッター @mo_shiina
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