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コロナで寺社の4割は消滅する。法要・拝観中止で収入激減

“マンション僧侶”は収入激減で退去の危機!?

 では、都会の僧侶のダメージは軽微なのか。東京には寺を持たず、マンションを宗教施設、兼住居にする“マンション僧侶”も多いが、その一人である軽部光一さん(仮名)は、内情をこう語る。 「檀家を持たない“マンション僧侶”は、葬儀や法要の仕事を紹介してもらう派遣僧侶が主な収入源。ところが、コロナで派遣仕事がほぼなくなり、月に40万円ほどあった収入が10分の1に激減した。緊急事態宣言が解除されても仕事の数は戻っていないし、高い上納金を取り立てている本山は何の支援もしてくれない。ウチはマンションを“寺”にしているので、このままではローンが滞り、退去しなくてはならないかもしれない……」  もう一つの伝統宗教である神道は、さらに深刻な状況のようだ……。宗教学者の島田裕巳氏が話す。 「寺院のように檀家の布施という固定収入がないので、神社のダメージはもっと甚大です。神社の収入の柱は、初詣の賽銭や物販、祭事での寄進だが、お祭りはできず、収入の大部分を占める初詣の時期に、感染が収束していなければ大打撃でしょう。神社の大多数が傘下に入る神社本庁が、困窮する神社を支援することもまずない。もともと減少傾向にあった日本の寺社は、さらに消滅のスピードを加速させるでしょうね」  寺社は収入源を失い、上部組織の支援もないばかりか、政教分離の原則から、政治団体や風俗業と並んで国の持続化給付金の「対象外」となっており、事態は深刻だ。日本には寺が7万7000、神社が8万1000あるが、國學院大学の石井研士教授の試算によれば、20年後までに全国の4割に当たる、3万余りの寺と3万1000の神社が消滅する……。前出の鵜飼氏が警鐘を鳴らす。 「少子高齢化に加えて、地方から都市への人口の流出が止まらず、地域から人がいなくなれば、寺社の経営は破綻し、空き寺や無住神社になる。施設の管理が行き届かず、台風で屋根瓦が数枚飛んだだけで、そこから雨漏りし、いずれ朽ち果てる。すでに、全国で1万7000もの寺院が空き寺になっているが、地域住民の心の社会インフラである寺社が消滅すれば、日本文化への影響は計り知れない」  だが、コロナ禍で新境地を模索する動きもある。Zoom法要やオンライン説法を配信する寺や、疫病退散のお札を無料で配布する神社が現れたのだ。だが、オンライン説教を配信する前出の瓜生住職は「ユーチューブから月に2000円ほど」と、収入的には焼け石に水……。あくまでも人々に寄り添う目的を強調する。
コロナ禍で寺社の4割は消滅する

築地本願寺のオンライン法要は、3台のカメラ、音響や配信機器を揃え、画面のスイッチングを行う本格派!

 苦境に立たされているのは伝統宗教だけではない。新宗教を取り巻く現状を島田氏が説明する。 「新宗教は軒並み、活動が止まっている。例えば、創価学会は、会館や会員の家庭に信者が集まって信仰を深める『座談会』を重要な活動の中心に据えているが、停止しています。新宗教は伝統宗教よりも、教団との縦の繋がりも信者同士の横の繋がりも強いので、ダメージも大きい。新宗教が右肩上がりの時期なら、活動を再開すれば回復も望めたが、近年、信者は半数に激減している。こうした下降期では、コロナで活動を一度やめた信者が、再開したときに戻るとは限らない。さらに、コロナという災厄に対して、信仰してきた宗教が何の役にも立たなかった……という不満や疑念を抱かれてしまう可能性すらあるのです」  コロナ禍が降りかかる今こそ、救世主の登場が待たれるが……。
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