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JR東海が生き残る道、キーワードは“空港ラウンジおじさん”

あえて線路を踏み外す選択も

 たとえば、新幹線を一定回数利用した顧客は、東京駅や品川駅に設置された特別なラウンジを利用できるなど、ロイヤルカスタマーを育てるサービスを整備すべきです。あるいは、グリーン席よりもさらに上質な、グランクラスのような座席を用意し、優先的に予約できたり、利用する場合割引できるような優遇を設けてもよいでしょう。  いずれにせよ、単に乗客を運びながら「いい日旅立ち」と「AMBITIOUS JAPAN!」を流すだけのビジネスモデルは、コロナ以降かなり危ないともいえるのです。  それは、JR西日本も同様です。  JR西日本は、運輸業が売上高の62%を占めていますが、営業利益率で言えば、不動産事業の営業利益率が21.1%とかなり高くなっています。単純な運輸事業ではなく、他の分野に力を入れる必要があります。 JR西日本 特に不動産事業では、梅田駅前のルクア大阪や天王寺ミオなど、駅直結で利便性の高い商業施設や複合施設を保有していますが、今後はJR東日本のように電子マネーのICOCAを使ったキャンペーンを進めるなどして、金融部門の利益をあげていくべきでしょう。  これまでも、鉄道会社各社は、駅を利用する乗客の顧客情報を、乗車履歴、駅ナカでの買い物などのデータを集めて分析し、ビジネスに活かしてきました。これらのデータ分析に加え、次に進めるべきは“客単価”をあげることと、“お得意様”を大事にする戦略です。  前者は、駅ナカ、駅前の商業施設の充実化や有料座席の増設を意味し、後者は航空会社の上級会員向けのサービスの整備を意味します。  たとえば、年会費2万円の「JR東海アメックスプラチナカード」「JR東日本ラグジュアリーSuicaカード」などを新規で発行し、クレジットカード特典を付帯させるのもよいでしょう。

筆者近影

 鉄道に乗る人が減るコロナ後の社会において、JR東日本と言う名の列車は、あえて線路を踏み外して線路に頼らない道なき道を進むべきなのです。
経済アナリスト/一般社団法人 日本金融経済研究所・代表理事。(株)フィスコのシニアアナリストとして日本株の個別銘柄を各メディアで執筆。また、ベンチャー企業の(株)日本クラウドキャピタルでベンチャー業界のアナリスト業務を担う。著書『5万円からでも始められる 黒字転換2倍株で勝つ投資術』Twitter@marikomabuchi
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