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サイゼリヤがコロナ禍で「出前館」に踏み切った深刻事情

 新型コロナウイルスの影響で、窮地に陥る外食業界は、ビジネスモデルの見直しに迫られています。それは大手飲食チェーンも例外ではありません。この2ヶ月間で、もっとも大きな変化が起きたレストランの一つが、サイゼリヤです。  6月15日公開のダイヤモンド・オンラインの記事によると、長年店内飲食にこだわってきたサイゼリヤが、7月からデリバリーサービスを実験的に開始する予定です。コロナ禍において、多くの飲食店がテイクアウトやデリバリーサービスを始めたこともあり、あのサイゼリヤもデリバリーサービスを始めることについては大きな驚きはないかもしれません。  しかし、これはサイゼリヤにとっては大変化なのです。  これまでのサイゼリヤのビジネスモデルを振り返りながら、その大きな決断に至った経緯を、コロナ禍で好調を続けるマクドナルドの例と比較しながら見ていきましょう。

コロナ禍で不況に陥ったサイゼリヤ

 緊急事態宣言が解除される前の2ヶ月間、サイゼリヤに足を運んだ方はそう多くはないのではないでしょうか。それを裏付けるデータがあります。  先日、サイゼリヤが発表した既存店売上高によると、対前年同月比で3月78.5%、4月38.6%、5月47.8%と低迷が続いています。  特に、4月と5月は対前年同月比で50%にも届かない大幅なマイナス成長となってしまいました。  これまで、サイゼリヤでは料理の味が落ちることから、テイクアウトやデリバリーサービスはほとんどせず、店内飲食に力を入れ続けてきました。  しかし、今回の新型コロナの影響を受けて、「おうちでサイゼリヤ!」と称し、持ち帰りサービスに力を入れたことで、現在は持ち帰りが売上の15~20%を占めるようになりました。当初は、5月6日までの期間限定として始めたこのサービス。しかし、好調によりさらにサービスが延長されることが決定しました。  人気の「ミラノ風ドリア」(税込・299円)や、テイクアウト限定商品「エビクリームグラタン」(税込・390円)、ラム肉の串焼き「アロスティチーニ」(税込・390円)など話題のメニューが次々投下されたことで、ツイッターを中心に話題となり、需要増につながったようです。

サイゼリヤのデリバリー開始はなぜ革命的か?

 さらに、前出のダイヤモンド・オンラインによると、7月からは大手飲食店デリバリーサービスの「出前館」を導入し、持ち帰りだけでなくデリバリーサービスも始めることになったのです。  この決断が、サイゼリヤにとっていかに衝撃的か説明します。  これまで、サイゼリヤは品質と価格のどちらの妥協も許さずメニュー開発を進めてきました。たとえば、サラダに使われるレタスは、種子から開発し、これまで18回の品種改良を進めてきました。また、トマトも、スーパーなどで売られる市販のものと違い、サイゼリヤのトマトは独自の開発を進めることでサラダに最適な硬さに仕上げられています。  これほどまでに品質にこだわりながら、物価が上がっても値上げをしない理由は、同社が掲げる「経済民主主義の実現」という理念が通底しているからです。値段の高い料理は、誰もが食べられるものではない。すべての人が、アクセスできる値段で、良質な素材でつくられたおいしい料理を届ける。看板メニューであるミラノ風ドリアも、値段は変えず、過去1000回以上味を改良しています。  それがサイゼリヤの創業以来の理念なのです。  サイゼリヤで唯一、“民主的”と言えないのは、あの超難問の「まちがいさがし」くらいではないでしょうか。そのため、同社は鮮度や味が落ちるデリバリーサービスには長年消極的だったのです。  しかし、今回の新型コロナの影響により、消費者が「出前館」や「Uber Eats」などのデリバリーサービスにかかる手数料を支払うことに抵抗がなくなった点や、デリバリーにしなければサイゼリヤの料理にありつけないという消費者の事情を鑑み、デリバリーサービスの開始に踏み切ったのだと思われます。
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コロナ禍の勝ち組・マクドナルドからわかること
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