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40代・未婚・子なしの派遣社員女性の恋が始まる/藤沢数希

―[モテる映画工学]―
~映画『甘いお酒でうがい』~
モテる映画工学

©2019吉本興業

どこにでもいそうな40代・未婚・子なしの派遣社員女性の恋が始まる

 川嶋佳子は40代の派遣社員で独身・彼氏なし、もちろん子なし。会社から帰ってはアパートでテレビを見ながらお酒を飲み、毎日日記をつけている。友達も少なく、地味に生きている。メディアやSNSでは、パパ活女子大生や港区女子など、カネやイケメンなどの獲物を探して東京のコンクリートジャングルをさまよい歩く女性が話題になるが、大半の都会の女性はこんなふうに地味に暮らしているものだ。  この映画は、川嶋佳子が会社の同僚を通じて知り合ったかなり年下の男性との恋が芽生え、地味だった日常がカラフルに色づき始める物語である。  世間では「男は若い女が好き」などといわれていて、それは一面においては正しいと思う。しかし、だ。某アダルト配信サイトでは、どんなワードが検索されるか定期的にランキングを発表しているのだが、男性視聴者のトップは常に「熟女」だ。次に巨乳や人妻などが続く。  ちなみに女性視聴者の検索ワードトップは常に「クンニ」。男性は40代の熟女にも興味津々なのである。そして、この映画は、そんな熟女にどうアプローチしていけばいいかのヒントになる。  ナンパというと、男性が自らの性欲を満たすため不特定多数の女性に話しかけ、誰でもいいからセックスしようという身勝手な活動と思われている。それも一面においては正しいのだと思う。  しかし、出会いの場などに一切出てこない地味な女性がランチの弁当を買うために目の前に並んでいたら、話しかけて連絡先を交換し、家で映画でも見ようと誘う。こうして、退屈だった日常に色彩を添えるというのも、ナンパの役割だ。
甘いお酒でうがい』 監督/大九明子 原作/川嶋佳子(シソンヌじろう) 脚本/じろう(シソンヌ) 出演/松雪泰子 黒木華 配給/吉本興業 9月25日公開
物理学研究者、投資銀行クオンツ・トレーダー職等を経て、作家・投資家。香港在住。著書に『外資系金融の終わり』『僕は愛を証明しようと思う』『コスパで考える学歴攻略法』などがある
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