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テレワークで残業代10万円が消えた。家計を維持できない“プア中流”の絶望

下がり続ける可処分所得、不安定な雇用形態……国が「中流」と銘打っていたものが、新型コロナウイルスで明確に崩壊した。仕事も辞められず、転職もできず、パートナーにも頼れず、生活レベルを下げざるを得なくなった新階層“プア中流”とは? 
プア中流

写真はイメージです

日本の給与システムはすでに崩壊。生活に苦しむ中流が急増

 厚生労働省が’19年に行った国民生活に関する世論調査の「生活の程度」に関する問いに対し、「上」と答えた人はわずか1.3%。しかし「中」(中の上、中、中の下の合計比率)と回答した割合は92.8%にも上った。いまだ根強い1億総中流思想だが、その存在が今、揺らいでいる。  これは都内の大手不動産会社に勤める斉藤一樹さん(仮名・40歳)の話だ。 「家庭を維持するために毎月80時間近くの残業をこなし必死で働いてきました。なのに、急なテレワーク化で残業代が消え、年2回の賞与もカット。ボーナス払いの住宅ローンもある。子供の学費も……。どう生きていけばいいのか」  斉藤さんは年収600万円台のいわゆる“中流層”に属していた。残業代を頼りにした家計は月10万円ダウン。 「テレワーク奨励金が月5000円出ますが、そんなの雀の涙ですよ」
プア中流

コロナで給料減に苦しむ斉藤一樹さん(仮名・40歳)

 コロナで実質3割の給与減になり、今は年収400万円台に。苦しい生活を強いられている。斉藤さんだけではなく、中流層に給与減の波が直撃している。

コロナ前から中流層の給与ダウンは起きていた

 ’20年12月8日公表の厚生労働省「毎月勤労統計調査」では、労働者1人当たりの平均給与額が7か月連続でマイナスになったと発表。さらに日本生命が約2万5000人を対象に、新型コロナウイルスの流行がひと月の給料にどう影響したかを聞いたところ、約2割が「減った」と回答。その減少額は平均で約月10万円だという。  経済学者の飯田泰之氏は「あと1~2年は給与総額のマイナスは続き、その幅が広がっていく」と予想する。 「景気の現状を示す指数の多くが’18年後半を頂点にピークアウトしています。景気に少し遅れて雇用・労働関連の数字が総じて悪くなるのはいつも通りの展開。そこに消費増税により景気後退。企業は生き残るために『働き方改革』と銘打った残業代カットが至上命題だったところに、コロナが追い打ちをかけている状況です。  統計上の給与減の中心は“残業代”です。基本給を低く抑えて、残業代や賞与で補塡するという慣行が一般化していたことで、それを見越した生活スタイルでボーナス払い、住宅ローンを組むなど元から“危険”だったわけです。もともと削りやすい残業代がなくなって、追い込まれるのは中流層です」
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“プア中流”は今後増えていく
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年収100万円で生きる-格差都市・東京の肉声-

この問題を「自己責任論」で片づけてもいいのか――!?
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