仕事

テレワークで残業代10万円が消えた。家計を維持できない“プア中流”の絶望

“プア中流”は今後増えていく

プア中流

写真はイメージです

 給与が同年代の平均年収以下になりながらも、中流にしがみつく……そんな下流とまではいかないまでも苦しく生きる“プア中流”が今後増えていくのだ。「中流崩壊」を危惧する社会学者の橋本健二氏も、「“中流”の範囲の縮小が、コロナによって決定的になった」と指摘する。 「日本は最近まで、年功制、終身雇用制が根強く、雇用が安定し、昇給が見込めたため、多くの人々は自分を中流と感じることができました。また独立自営の自営業者の存在が、さらに中流を分厚いものにしていました。  しかし、非正規労働者が2000万人を超える時代を迎え、年功制や終身雇用が適用される範囲が大幅に縮小しました。しかも自営業者は発展途上国や大企業との競争にさらされ、事業を続けることが困難になりました。コロナはこうした傾向をさらに強めたのです」

全職種に影響が

 これはコロナで大きな打撃を受けている飲食、観光だけの話ではない。全職種に影響を及ぼす可能性は高い。 「人員削減のために、一般事務職である経理、総務などの仕事も“クラウド化”しています。工場ではとうに無人化が進んでいる。現場には労働者ではなく“管理する人間”が1人いれば済む時代がもう来ています」(飯田氏)  また、橋本氏も「正社員の仕事も、賃金を抑えられる非正規労働にすげ替えられていくでしょう」と警鐘を鳴らす。  1憶総中流のなかで、新たに誕生したプア中流。中流の幻想にしがみつく人々に絶望が忍び寄ってきている。 ▼あなたの生活の程度は? (令和元年6月、厚労省「国民生活に関する世論調査」より) ・上 1.3% ・中 92.8% ・下 5.9% ※この“中92.8%”について橋本氏は、「アンケートも上、中の上、中、中の下、下と明らかに中の幅が広いという設問の誘導がある。実際下流でも中の下を選ぶ」と指摘する
飯田泰之氏

飯田泰之氏

【経済学者・飯田泰之氏】 明治大学政治経済学部准教授。専門は経済政策、日本経済論。内閣府規制改革推進会議委員などの公職の他、メディア出演も。著書に『経済学講義』(ちくま新書)。
橋本健二氏

橋本健二氏

【社会学者・橋本健二氏】 早稲田大学人間科学学術院教授。階級構造研究を用い、日本の格差社会に警鐘を鳴らす。近著に『中流崩壊』(朝日新書)、『アンダークラス2030』(毎日新聞出版)。 <取材・文/週刊SPA!編集部 撮影/長谷英史 モデル/城野マサト>
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年収100万円で生きる-格差都市・東京の肉声-

この問題を「自己責任論」で片づけてもいいのか――!?
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