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紗倉まな「セクシー女優というラベル付け」に感じていること

 2020年は小説「春、死なん」が野間新人文学賞にもノミネートされ、職業の垣根を超えてマルチに活動する女優・紗倉まな。
紗倉まな

紗倉まな

 2021年で活動9周年を迎える彼女は、今何を考え、どこに向かうのか。彼女が抱える、職業に対する「ラベリング」への心の葛藤と、その先に見据える「将来の夢」とは――。

他の仕事をすればするほど、自分の原点を自覚する

紗倉まな

今でも月1本は必ず作品をリリースする

――つい最近もVR作品が出たばかりだそうですね。文学執筆など幅広く活動されていますが、現在も仕事量としては、ビデオ撮影が一番多いんですか? 紗倉まな(以下、紗倉):AV女優としての仕事は、デビューの時から月1本は欠かさず作品をリリースすることになっているんです。ただ、その1本は1日で撮ることが多いので、グラビアなどの撮影を入れても、月の半分は殆ど脱いでいません……。意外とエロいことはやってないんだな~と思うこともあります。 ――執筆活動やニュース番組でのコメンテーターなど、職業の垣根を超えてマルチに活動されている印象があります。現在の仕事で、一番やりがいを感じるものはなんですか? 紗倉:多ジャンルのお仕事の機会をいただけることはとてもありがたいのですが、一番やりがいを感じるのはやっぱりAVのお仕事です。撮影は体力を使うし大変なんですけど、だからこそ頑張った手応えもダイレクトに感じやすいというか。  自分の礎であり原点はやっぱりAVだなあと感じます。ただ、別の入り口から自分を知ってくれる人の数が増えることは嬉しいですし、そこからAVの方へ逆輸入という形で興味を持ってもらえたら、もっと嬉しいな、という気持ちで挑んでいます。 ――今年は執筆された小説「春、死なん」が野間文学新人賞候補にもなりましたよね。来る仕事の幅に何か変化はありましたか? 紗倉:意外と、変わっていない気がしています。振り返ってみるとわかりやすい節目というのもなくて……ゆるやかな広がりなんですよね。えろ屋である私から、地続きになっている感じです。  ただ、小説を書きはじめてからは、真面目なことを話す場に呼んでもらえることが増えましたね。それが逆に歯がゆいこともあるんです。もともと世の中に声を大にして言いたいことがあるわけでもなかった自分が、有識者の方々の中で何を語れるのか、そのことについてはいつも悩んでしまう。  もともと真面目な人間ではないし、一般常識も知らないほうなので、違うフィールドには戸惑ってしまうというか、この先も慣れることはないような気がしています(笑)。ずれた回答をすれば「さすがAVやってるだけあるね!」と言われて“もやっ”とすることもあるし、真面目すぎることを言ってしまった時も、蓋を開けてみたら自分の発言に共感性がなかったり、人の弱みに寄り添えるほど優しくない自分に気づいてしまう時もある。自分は誰のために、何を言っているのか。話せば話すほど、本当に自分の言葉なのだろうか。いつも考えさせられます。

「セクシー女優」というラベリングに、自身ももがいている

紗倉まな

業界が好きだからこそ、自分らしい発言をし続ける

――「春、死なん」でも「ラベリングされた役割からの解放」を一つのテーマにしていらっしゃいますよね。ご自身もそういった「ラベル付け」に苦しんでいらっしゃるのでしょうか。 紗倉:そうですね……。AV女優という職業に対するラベリングには偏見が多いですが、偏見があるからこそ需要のある産業だとも思っているので、うまい着地点を見つけたほうが、心にとっても健康的だな、と思っています。  AV女優のことを「自分たちの性欲のはけ口」としか認めていない人にとっては、私がエロ以外の発言をすることで、「はけ口の人間がえらそうに意思を語るな」「抜きづらくなるからやめろ」となるんですよね。私たちは職業というラベルの中で発言すべき内容も決められて、SNSではセクシーなショットをあげ続けて、程よい下ネタを言うのが模範解答、とでもいうような圧力はひしひし感じます。  ただ、私はこの業界が好きですし、そういった模範解答を提供できる女優さんのこともリスペクトしていて。各々に合うスタンスで楽しく、自分の思ったことを発信し続けられたらいいなと。 ――幅広い活動で、多くの女優さんの指針になられていると感じています。2021年は活動9周年とのことですが、この9年間で、自身を取り巻く環境に変化を感じていますか? 紗倉:たった10年にも満たない期間ですが、目まぐるしく変わったと思っています。私がデビューした頃は、このお仕事って、長く続ける人が少なかったんですよ。3年続いたらもうベテランだった。でも、今は長く続けたいと言っている方、実際に長く続けられる方も多い。働きやすい環境が整えられたことも繋がっているんだと思います。長く仕事を続けてくださっている方々のおかげで、道が舗装されて歩きやすくなったり、勇気づけられたり、発言しやすくなったりしています。超絶大感謝です。 ――紗倉さん自身は、ラベリングや否定的な意見もまっこうから取り入れてしまうタイプなのでしょうか。 紗倉:そうですね……根がネガティブなので(笑)。褒められている回数のほうがきっと多いのに、ネガティブな言葉はなぜか大きく聞こえて、いつまでも残ってしまいます。そうはいっても、悪口もある程度パターン化されてるので、自分の中で振り分けていくと、治癒力というか、傷をつけられてから復活するまでの速度が速くなったように感じています。昔よりは受け身を取る能力に長けてきたといいますか……。職業的にも活動的にも、サンドバックになりやすい自覚はあるので、「どんとこい!そしてさようなら!」、そんな具合で最近は過ごしています。 ――2020年はある番組で、性産業に身を置く人に対する、新型コロナへの保証差別についても発言されていましたよね。矢面に立っているのが伝わりました。 紗倉:そういう真面目な話は毎回、自信はないけれど、絞り出して言っているんです。みんなの声の代弁と思ったことは一度もない。間違った見解かもしれないし、共感できない人もいると思いながらも、自分が素直に思ったことを言わなければ、自分がその場にいる意味がないから。  あの時はけっこう論点がずれていっちゃって、反省点も多かったんですが……短い時間で語れることは限られているから、最近はわりきって、自分の中では「ポンコツがポンコツなりに考えてみたことを言います!」というスタンスにしています(笑)。
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目指すのは、自分らしい「えろ屋」
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1992年生まれ・フリーライター。ファッション誌編集に携ったのち、2017年からライター・編集として独立。週刊誌やWEBメディアに恋愛考察記事を寄稿しながら、一般人取材も多く行うノンフィクションライター。ナイトワークや貧困に関する取材も多く行っている。自身のSNSでは恋愛・性愛に関するカウンセリングも行う。

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