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「医師でも油断するとかかる」国会議員で2番目にコロナ感染した医師兼参院議員の証言

インフルエンザが流行しないのは「飛沫対策」の効果か

 私はこの体験を含めて、コロナ対策においては、飛沫よりも、むしろ接触感染に気をつけるべきではないかと考えています。  実際、最近の報道でもこんなケースがありました。昨年12月以降、都営地下鉄の運転手の集団感染がありました。その原因は、共同利用する洗面所の蛇口であるといいます。  もう一つ、接触感染がより重要だと私が考える理由があります。あまり大きく報じられてないですが、今シーズンは、インフルエンザの感染者数が例年に比べて、非常に少ない。報道によると、今年1月18日~24日の1週間で、定点医療機関からのインフルエンザ感染者数の報告数は64人。昨年の同時期には約9万人だったということですから、1000分の1以下です。  これは、国民のみなさんが、マスクやソーシャルディスタンスに加えて、徹底した飛沫感染対策をしている影響ではないでしょうか。  一方、コロナの感染者数はインフルエンザほど減っていない。これは、コロナの感染力の問題もあるでしょうが、飛沫は防げているものの、接触感染を防ぎ切れていないからではないかと思うのです。  いまの政府のコロナ対策は、飛沫だけに偏りすぎていているのではないでしょうか。もっと接触感染に注意を払うべきだと私は考えています。 桜井充参議院議員

体験してわかった「自宅療養」のつらさ

 冒頭に戻りますが、11月12日木曜日に、我々を接客した方が陽性になったという連絡をお店から受けました。翌日に講演の予定があったことから、地元・仙台の医師仲間に頼み、翌日の金曜午前中に念のため唾液のPCR検査をしました。  症状としては、金曜日の午前中まではなんともありませんでした。しかし15時頃に、「やはり具合がわるいな」と感じ、熱を測ると38.5分。その後、咳も出てきました。  16時にPCR検査の結果が出てきて、陽性の結果でした。予定されていた講演などはもちろん、すべてキャンセルです。入院したかったのですが、療養ホテルすら空いていない。熱があっても、自宅にいるしかないのです。妻は自宅近くの実家に移ってもらい、自宅療養生活がはじまりました。  体験してみると、自宅療養はやはり、大変でした。コロナの症状もあります。ぜんそくの発作のようなせきが大変苦しかったですし、夜中も3~4回トイレにかけこまなくてはいけないほど、下痢が出る。全身の痛みもなかなか取れず、眠れません。  自分は部屋にあった痛み止めを飲むなど、薬を自分で考えて使って、少し楽になりました。しかし、私の場合は医師免許を持っており、その知識があったからこそ。普通はそんなこともできない。不安の中、ただよくなるのをじっと自宅で待つしかないのです。  食事は幸いにも、実家に帰った妻がはこんでくれました。幸いにも妻は自宅近くの実家に移ってくれましたが、そういうケースばかりではないでしょう。家庭内感染の防止といっても、なかなか難しいのが現実です。

飛沫感染だけでなく「接触感染」にも注意を

 翌週11月16日月曜日に、レントゲン検査をしてもらいました。その時に医師から聞いたのは、「仙台でも、ベッドはあるが、看護師さんの数が足りてない」と。高齢者施設でのクラスターなどの影響もあり、マンパワーが割かれ、11月の段階でも、医療体制は逼迫していたのだと思います。  翌日17日火曜日になって、熱がやっと引きました。自分は、とくに後遺症はなかったですが、我々を接客したお店の方は、熱はすぐにさがったものの、1週間ほどたってから味覚障害があったと聞いています。  現在、飛沫感染への対策ばかりが強調されますが、対策は本当にそれで充分なのでしょうか。自分の体験として、本当に気をつけるべきは、むしろ、接触感染対策なのではないかと考えています。  昨年12月には、こうした体験を含め、田村憲久厚労大臣に直接提言しました。トイレ対策や接触感染対策などに少しでも生かしていただきたいと考えています。  私は医師ですが、それでも一瞬の油断が感染につながってしまいました。ドアノブなど、不特定多数の人が触る共用部や、トイレなどの感染源となりやすい場所は接触感染の注意が必要です。ものを食べるときは、きちんとアルコール消毒をして、手づかみは避けるべきでしょう。  私の経験がみなさんの感染症予防の一助になれば幸いです。感染当事者として、医療体制の拡充や接触感染対策の充実に取り組んでいきたいと思います。〈取材・文・撮影/日刊SPA!取材班〉
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