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開業医でも勝ち組ではない…コロナで収入が半減した40代医師

 世界経済にも大打撃を与え続けている新型コロナウイルス。恩恵を受けているのはごく一部の企業に過ぎず、ほとんどの業界は業績が悪化。それは医療機関も例外ではない。
待合室

写真はイメージです(以下同じ)

 外来患者の診察を制限せざるを得なくなり、売り上げの大部分を占めていた診療報酬が激減。多くの医療機関ではボーナスの支給額が前年よりもカットされた。そのことはニュースでも大きく報じられ、覚えている人も多いはずだ。  なかでも経営危機に瀕しているところが多いと言われているのが、町の小さなクリニック。北沢徳祐さん(仮名・40代)が院長を務める内科医院も苦しい経営を強いられているという。

コロナ禍で診療報酬が激減

「昨年の緊急事態宣言中は、一時的に休診した時期もあり、その後もしばらくは新規の外来患者の受け入れを断っていました。当院独断での判断ではなく、関係各所からの通達・指示でそのように対応しなければならなかったんです。現在も37.5度以上の発熱が確認された患者さんについては診療をお断りしており、発熱患者を受け入れてくれる大きな医療機関を紹介しています。  地域医療の一端を担う立場としては本当に心苦しいですが、ウチのクリニックに医師は私しかいません。もしコロナに感染してしまえば大勢の患者さんに迷惑をかけてしまうので……」  彼はもともと大きな総合病院に勤めていた勤務医。親は会社員で後を継げる病院はなかったが、医大生のころから「いつかは開業医に……」と考えていたそうだ。そのため、実家や祖父母からの援助を受けて開業することができたが、初期費用だけで軽く1億円以上のお金がかかったという。 「田舎なので土地代は安かったですが建物や設備費用はもちろん、検査や治療に必要な機材を購入するとウチ程度の規模のクリニックでもこのくらいの費用がかかってしまうんです。さすがにこれほどの額だと全額用意するのが難しかったため、約5000万円は開業医向けのローンの利用しました」  それでも自分が生まれ育った町で開業したこともあり、かつての旧友たちを通じて口コミで噂が広がり、地元でも人気のクリニックとして毎日多くの患者が訪れていたとか。 問診 今も厳しい経営ながらもなんとか踏みとどまっていられるのは、「地元でひいきにしてくれる患者さんがいるから」と話す。

収入はコロナ前の半分以下に

「それでも去年は、一昨年に比べると収益が3割も落ちました。しかし、月々のローン返済額は減額になるわけでもないですし、スタッフの給料だって大きな病院みたいに簡単には減らせません。夜勤がないので本来なら人手を集めやすいのですが、コロナ禍で求人を募集しても集まりにくくなっている。その状態で辞められてしまうとクリニックの業務が回らなくなるため、給料は据え置くしかないんです」  検査用の機器など新たな設備を導入することも考えていたが、診療報酬が減った今の状況では厳しいと判断。当分の間は設備投資を控えるつもりだ。 「私個人の報酬はコロナ前の半分以下に減り、月50万円もありません。同年代のサラリーマンの月収よりは多いかもしれませんが、私は開業医なので当然ボーナスもない。病院のローンとは別に自宅の住宅ローンの支払いもあるので大変です。正直、勤務医だったころのほうが生活には余裕がありました」
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勤務医に復帰することもできるが…
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ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。

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