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ブラック企業“霞が関”の本音。過労死ラインを越える残業が月100時間以上

「自分を蔑ろにし、他人を幸せにしようというのは矛盾していた」

官僚 国会対応も官僚の業務を圧迫させていると話すのは、ツイッターで「ちん@元もんかしょう」という名で活動している元文科省官僚のちんさん(30代・女性)。 「国会会期中は、国会議員の答弁書を作成するために奔走し、本来やらなければならない政策に関する仕事が後回しに。紙文化なので、一日にコピーを何百枚も取ることもざら。深夜遅くまで資料の準備に追われ、早朝に大臣などの答弁者へ説明する。決裁のハンコをいくつももらわなければならない文書も多い。  これだけ働いても、霞が関にいると教育現場との距離が遠く感じ、政局に振り回されるだけで、これが本当に子どものためになっているの?と疑問に思ってしまいます」  教員の多忙さを軽減したいと文科省に入ったちんさんだが、皮肉にも自らが多忙で倒れてしまう。 「文科省でしかできない仕事もあり、周りの人にも恵まれていた。私が辞めれば他の人の負担が増えるので『後ろめたさ』も感じていました。  でも、子育てとキャリアを両立させている女性官僚の『ロールモデル』も見つからず、いくら自分を犠牲にして働いても、家族や周りは幸せにならない。自分を蔑ろにし、他の人を幸せにしようというのはすごく矛盾していました」  現在、ちんさんは夫婦で「むげんプリント」という学習支援サイトを運営している。学習プリントが無料ダウンロードでき、子どもや家庭への支援だけでなく、文科省で成し遂げられなかった「教員の多忙軽減」について、個人でできることを模索した結果だ。

河野大臣の下で霞が関改革は進むのか

官僚

※内閣人事局の発表より。’19年度に自己都合退職した20代キャリア官僚は、6年前と比べ4倍以上に

 ’19年には6人の国家公務員が過労死し、20代のキャリア官僚退職者も6年で4倍に。当然、政府の危機感も強い。  菅義偉内閣で、行政改革担当大臣に就任した河野太郎氏は早速、「脱ハンコ」「ペーパーレス化」に着手。1月22日の記者会見では官僚の残業代はテレワークを含め全額支払うと明言した。  現役の外務省キャリア(30代・男性)が霞が関で起きている変化の兆候を話す。 「数年前から残業代はほぼ全額支給されるようになった。外務省にも新人の新聞記事コピーなど、まだまだ改善できる点はあるが、そもそもサイン文化でハンコは使っていなかったし、課内会議はマイクロソフトのTeamsを使って完全リモート。決裁もメールで大半が済む。  ただ、業務合理化が至上命題となってはならない。目的は中長期的な外交安保戦略の構想・形成のため、自由闊達に議論できる時間を創出していくことだ」
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霞が関を変えるためには「世論が必要」
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