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ブラック企業“霞が関”の本音。過労死ラインを越える残業が月100時間以上

経産省を辞めて約10年。多様化する元官僚の“その後”の人生

 ’12年、経産省在職中にブログで自身の給与や省庁の内情を赤裸々に公開し、改革の必要性を訴えていた宇佐美典也氏。約10年たって、官僚の置かれた立場はより厳しくなったと語る。 「与野党の対立に加え、官邸の存在感が増したため、権力関係が複雑になり、官邸が一方的に決めたことを野党が追及して官僚が返答に窮するケースが増えています。官邸主導で決められ、自分たちも納得していないものに対して、野党合同ヒアリングなど、公の場で槍玉に挙げられるのではやってられないですよ」  一方、改善されてきたこともある。 「辞める人が増えたことで、若くして管理職に抜擢される事例や、民間からの人材流入が増えるなど、人事の幅は確実に広がっています。  官僚と民間を行き来する、いわゆる『回転ドア』も増えてきた。一時期、副業的に転職エージェントをやっていましたが、経産省のように民間への転職ハードルが低い省庁だけでなく、厚生労働省などでも管理職不足に悩む民間企業が女性官僚を引き抜きたがる事例は圧倒的に増えている。  省庁内から発信する人が増えたことも、喜ばしいこと。当時、僕のブログなんてめちゃくちゃバッシングされましたから(笑)」

“儲けること”に対する意識の違い

 物申す官僚の先駆者でもある宇佐美氏自身の働き方は、この10年でどう変化したのか? 「僕はフリーランスなので、状況は目まぐるしく変わりましたよ。辞めて数年はプラプラして、山っ気のある人と組んで、官僚時代の数倍を稼いだと思ったら、大損害でお金がなくなったことも。  やっぱり“儲けること”に対する意識が、役所と民間とでは決定的に違うんです。お金を前にして怯むか、盛り上がるか(笑)。官僚は儲けてはダメですからね。  でも、肩書もお金もなくしてから、人の優しさに気づけるようになり、ようやく6年目くらいから再生エネルギー分野の制度面のアナリストとして地に足がついてきた。元官僚は民間に行っても、たぶんプライドが邪魔して『エサくれよ~』って犬にはなれない。  でも『ほしいな~』という雰囲気を醸し出しながら、人に近づく猫にはなれる。僕は役立つよ、可愛いよって(笑)。そういう思考のチェンジにかなり苦戦したことは伝えたいですね」  転職者への金言だ。 【千正組代表・千正康裕氏】 ’01年、厚労省入省。社会保障・労働分野で8本の法律改正に携わる。’13年には大使館勤務を経験。’19年9月に退官し、現職 【制度アナリスト・宇佐美典也氏】 ’81年生まれ。東京大学経済学部卒。’12年9月、経済産業省を退官。新著『菅政権 東大話法とやってる感政治』(星海社)が3月刊行予定 <取材・文/梶田陽介 仲田舞衣 村田孔明(本誌) 写真/時事通信社>
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