旅行代理店社員の惨状。高くない年収が100万円ダウン、副業も焼け石に水
最大手のJTBが1000億円の赤字を見込むなど、新型コロナにより壊滅的な被害を受けた旅行業界。深刻な業績不振の中、規模の大小を問わず、多くの会社はボーナスを全額、または大幅カットに踏み切っている。
結果、数十万円の年収ダウンで済めばまだマシ。なかには高給取りではないのに100万円近く収入が減った野島一平さん(仮名・38歳)のような人も珍しくない。
「2020年の年収はたったの330万円。こんな状況ですから減収は当然覚悟していました。でも、さすがに前の年から90万円も減るなんて思ってもいませんでした」
現在はウェブサイト経由で申し込まれた個人旅行の手配などを担当。以前は営業所での窓口勤務だったがコロナ禍で閉鎖となり、今の部署に配置替えとなった。
「けど、肝心の仕事がないんです。サイト経由なので窓口と違い、ホテルやツアーも自動的に手配できるシステムになっていて、問い合わせやトラブルへの対応が主な業務ですが申し込み件数激減でそれすらほとんどない。今はオフィス勤務と自宅でのテレワークが半々といったところですが、仕事が減って残業なんて全然ありません。
コロナの前までは月に30時間前後の残業があり、4万円ほどの残業手当があったのにそれもなくなりました。ウチは基本給が抑えられているため、残業代がないと本当にキツいんです。ボーナスカットとのダブルパンチで20代の新人並みの年収ですからね。おかげで妻とは家計をどうするか毎日話し合っていました」
しかも、エステサロンでパート勤務していた妻も出勤日を半分に減らされてしまい、月々の住宅ローンを支払うのも一苦労。「ボーナス払いを設定してなくて本当によかった」としみじみと話す。
とはいえ、夫婦の世帯年収は前年比なんとマイナス130万円。節約などの家計の見直しである程度改善できるといってもそれにも限度がある。野島さん夫婦にとってどうにかできるレベルのものではなかった。
「とりあえず、仕事は幸いにも忙しくなかったため、空いた時間を使って副業をしようと在宅ワークの仕事を始めたんです。私が選んだのはエクセルを使った表やグラフ、文章作成といった事務仕事。勤務先は旅行会社ですが営業よりも内勤だった期間のほうが長かったし、事務仕事は結構得意なんです。これなら同じ副業でも効率よく稼げると思って」
仕事はアウトソーシング系の求人サイトをチェック。副業向けの事務仕事の募集も思っていた以上にあったそうで、すぐに仕事を得ることができたそうだ。
「何度かそれで実績を作った後は、スキルマーケットのサイトにも登録しました。そこでは向こうから依頼が来るので探す手間が省け、すごく助かっています」
副業で得ている月収は、なくなった残業代に相当する約4万円。ただし、この報酬を得るために会社での残業の倍以上の時間を費やし、効率がいいとはいえない。
「決して割のいい仕事じゃないですが、そこを考えたら何もできませんから。けど、今は月の半分がテレワークですし、通勤にかかる時間を副業に充てていると思えば、そこまで悪くもないですよ」
また、妻も今年に入って新たに別のパートと掛け持ちをしているとか。それでも減額分の世帯年収をカバーすることはできないが、今のペースならコロナ前の30~40万円マイナス程度に抑えられそうな見通しだ。
仕事が減って毎月の残業代がゼロに
激減した収入を補填しようと事務仕事の副業を開始

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ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。
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