更新日:2021年11月01日 09:48
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巨人を応援する阪神ファンの姿を見て思う「野党共闘」の難しさ/相澤冬樹

よみがえった“亡霊”は選挙を左右するか?

岸田総理への手紙全文(赤木雅子さん提供)

岸田総理への手紙全文(赤木雅子さん提供)

 森友事件とは何か? 4年前の2017年に発覚した森友学園への国有地の巨額値引き売却と、発覚後に隠ぺい策として行われた公文書改ざん。主役は森友学園ではなく財務省だ。近畿財務局の赤木俊夫さんは現場で改ざんに反対したが上司にやらされ、3年前の2018年3月7日に命を絶った。  その後、忘れられかけていた事件が今、“亡霊”のようによみがえっている。犠牲者の妻、赤木雅子さんが10月6日に出した“総理への手紙”が大きなきっかけになった。 「人の話を聞くのが得意」という岸田総理大臣に直筆の手紙を送り、夫の死の真相解明のため、第三者の手で再調査をしてほしいと訴えた。この手紙を報道各社が大きく伝えた。立憲民主党の辻元清美副代表が国会の代表質問で読み上げ、NHKで全国に生中継された。またたく間に日本中で共感が広がっている。“奇跡”のようなできごとだ。 “亡霊”の復活を怖れているのは、事件を“なかったこと”にしたい人たち。その筆頭が安倍晋三元総理ではないだろうか? 妻の昭恵さんが森友学園の小学校の名誉校長を務めていた。そこを国会で野党に突かれて「(取引に)私や妻が関係していたら総理大臣も議員も辞める」と言い切った。その後に改ざんが始まり、取引に関する公文書から安倍昭恵さんの名前が消された。それをやらされたのが亡くなった赤木俊夫さんだ。  安倍さん、菅さんに続いて政権を握った岸田総理も、森友再調査から逃げ腰の姿勢を示している。岸田総理は森友事件に関係していないのに、自民党総裁選に出ると表明した当初はやる気を見せていたのに、誰に忖度(そんたく)しているのだろう?  10月14日に衆議院が解散した。日本は19日に総選挙に突入した。多くの人々が支持する「森友再調査」は、他の争点より与野党の違いが単純でわかりやすい。与党は「しない」、野党は「する」。この国のためにどちらがいいのか? 森友再調査が実際に衆院選の最重要テーマに浮上すれば、本当に“奇跡”が起きるかもしれない。

“より大きな敵”への闘争心

 最後にもう一度プロ野球の話を。パ・リーグではロッテに51年ぶりの優勝マジックが点灯し、ファンは盛り上がっている(10月19日現在)。パ・リーグのファンに言わせると、パ・リーグではよそのチームへの敵対心がセ・リーグほど激しくないという。どちらかというとセ・リーグへの対抗心の方が強いようだ。  よく「人気のセ、実力のパ」と言う。セ・リーグは巨人のおかげでテレビ中継があるため知名度が上がった。パ・リーグは実力があるのに人気ではセ・リーグにかなわない。これは悔しいだろう。 “より大きな敵”が外にいると身内の争いが収まるというのは、国際政治でもよく言われることだ。野党共闘がうまくいかないというのは、“より大きな敵”への敵対心、「何が何でも政権を取って理想の政治をめざす」という闘争心が足りていないのかもしれない。  自民党には「何が何でも選挙に勝って権力を維持する」という闘争心がある。野党も少しは見習うべきではないか? 文/相澤冬樹
無所属記者。1987年にNHKに入局、大阪放送局の記者として森友報道に関するスクープを連発。2018年にNHKを退職。著書に『真実をつかむ 調べて聞いて書く技術』(角川新書)『メディアの闇 「安倍官邸 VS.NHK」森友取材全真相』(文春文庫)、共著書に『私は真実が知りたい 夫が遺書で告発「森友」改ざんはなぜ?』(文藝春秋)など
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メディアの闇 「安倍官邸 VS.NHK」森友取材全真相

森友事件スクープの裏側を、忖度なく書きつくす!!

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