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「敵基地攻撃能力」という落とし穴。リアルな国防に勇ましい言葉は不要<慶大名誉教授・法学者 小林節氏>

「敵基地攻撃能力」論の前にやるべきこと

 そこで、今回のロシアのウクライナ侵攻に学んでわが国の自衛力を実際に急速に向上させる方法を考えてみたら、次の様になるはずだ。  まず、日本を侵略しようとする国は、できるだけ無傷の日本を占領して活用したいと考えているので、戦わずに降伏させようと、外交と軍事演習で恫喝してくる。だから、それに世論が負けないように、「専制」国家と「自由と民主主義」国家の違いを主権者国民に正しく知らしめ、独立の気概を養うことが重要である。  加えて、アメリカにとって自由民主主義国家群の橋頭堡として日本と台湾が存在する以上、日本有事の際に米軍が参戦しないはずはないということを国民に知らしめておくことも肝要である。  また、軍事侵攻は突然に始まるものではなく、十分な準備を整えて始まる以上、非友好国内における軍や物資の移動について常に情報収集を怠らないことである。  さらに、今回、専制国家の軍隊は士気が低く意外に弱いことも露呈した。その点で、日本の自衛隊が、国際的に比較して、能力が高いことはあまり知られていない。だから、現行制度を変更せずに自衛隊の能力を向上できること、例えば弾丸の備蓄増などは至急行われるべきである。  非友好国の側も常に日本の情報を収集している。彼らも「ウクライナの泥沼」の再現は望まないはずである。だから、彼我を比較してみたら、容易に日本に侵攻することなどできないはずである。 「勇ましい言葉」は不要である。 <文/小林節 初出:月刊日本6月号>) こばやしせつ●法学博士、弁護士。都立新宿高を経て慶應義塾大学法学部卒。ハーバード大法科大学院の客員研究員などを経て慶大教授。現在は名誉教授。著書に『 【決定版】白熱講義! 憲法改正 』(ワニ文庫)など
げっかんにっぽん●Twitter ID=@GekkanNippon。「日本の自立と再生を目指す、闘う言論誌」を標榜する保守系オピニオン誌。「左右」という偏狭な枠組みに囚われない硬派な論調とスタンスで知られる。
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月刊日本2022年6月号

【特集1】連合よ! どこへ行く
【特集2】ロシア、その知られざる実像
【沖縄復帰50年】

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