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高齢化で急増中の在宅医療がめざす「患者と家族の幸せ」とは

自宅が病院になれば、気負わず安心して治療できる

カリス:高齢化社会とコロナ禍で在宅医療が急増しましたが、在宅医療は他の診療(入院診療・外来診療・遠隔診療)とどう違いますか? 梅本:自宅が病院になってしまえば、患者さんの捉え方そのものが変わりますよね。病院にいれば病人ですが、自宅にいれば単なる住人です。患者さんは変に気負わずに、日常がある我が家で家族と安心して過ごせます。 「症状を上手く説明できなかったらどうしよう」「夜中に何かあったらどうしよう」などと、悩む必要もなくなりますね。医療費的にも、施設入所や長期入院よりは費用負担が少ないです。  私は「患者さんと家族に寄り添う、もう一人の家族のような存在になりたい」という思いで、日々在宅医療に携わっています。私自身はもちろん、一緒に在宅医療を支える訪問看護師やリハビリスタッフ、ケアマネージャー、薬剤師などのスタッフもそうです。 カリス:そんな強い使命感に結びついた原体験があったのでしょうか? 梅本:実は私の母が若年性認知症を発症したんですね。母の介護のために父も離職して、家族全員で支えていました。完全に治すことができない疾患というのもあって、病気は患者個人に帰属するものではなく、周りの家族とも共鳴するものだと身をもって実感しました。  そんな思いから、適切なリハビリやケアで病気の進行を遅らせて症状を軽くしつつ、患者さんと家族両方の心のサポートもすべく、精神科・内科・リハビリ科を網羅する在宅医療専門診療所を開業しました。 「良き医師は病気を治療し、 最良の医師は病気を持つ患者を治療する」(ウィリアム・オスラー)

在宅医療は精神科・内科・リハビリ科をカバーできる

訪問診療を行う梅本院長

訪問診療を行う梅本院長

カリス:精神科・内科・リハビリ科をすべて網羅するとのことですが、エフェメールホームクリニックではどんな疾患の患者さんを対象にしていますか? 梅本:認知症、うつ病、躁うつ病、統合失調症などの精神疾患に加えて、ALS、パーキンソン病などの難病、心疾患、脳梗塞後遺症、肺がんなど幅広く診療しております。①通院が困難な患者さん、②末期がんなどの終末期の患者さん、③最後を自宅で過ごしたい患者さんのご自宅を訪問しています。 カリス:精神科・内科・リハビリ科すべてに対応するために、どんな取り組みをしていますか? 梅本:私は精神内科とリハビリ科両方の職務経験があるので、患者さんに合わせたさまざまな医学管理・処置・検査を提供しています。そのために、私とスタッフは日々臨床的スキルの習得・向上に励んでいます。 カリス:介入前後で、患者さんの症状と気持ちにはどんな変化が起きていますか? また、家族の気持ちにも変化は生まれていますか? 梅本:「トータルとして、とても良かった」と言ってもらえることが多いです。たとえば脊椎管狭窄症の疑いがあり、慢性的な腰・足の痛みと胃の不調およびそれらに伴う不眠症を訴える患者さんがいました。その方からは、「腰・足・胃の症状が全て改善され、少しずつ眠れるようにもなった」との嬉しい声をいただきましたね。  気持ちの変化としては、ご自身からは「体が楽になったので、気持ちもとても楽になった」、家族からは「先生が優しく、通院の負担もないので安心できる」と言っていただきました。 「心と体は表裏一体です。どちらかが悪ければ、もう一方も悪くなります。だから健康を考えるとき、肉体的健康、精神的健康の両方に配慮しなければなりません」(ジョセフ・マーフィー)
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在宅医療で患者も家族も幸せになれる医療を目指す
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1993年、韓国生まれ。16歳で東京大学に合格。日本政府から天才認定(学生としては初めて、研究業績だけで永住権を取得)を受ける。博士(情報理工学/東京大学)。英・ケンブリッジ大学/独・ミュンヘン工科大学/伊・ミラノビコッカ大学で訪問研究。⽇本トップレベルの医療AI研究者であり、「みんな健康かつ笑顔で暮らせる社会」を実現すべく、医用画像データプラットフォームを手がけるCallisto株式会社を創業。YouTubeチャンネル『カリス 東大AI博士』にて、科学的勉強法・科学的思考法・AIなどについて配信中

誰でも“天才になる”方法

16歳で東大に合格した
元引きこもりの僕が教える逆転の思考法


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