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ウクライナ報道にみる「朝日新聞」の迷走――現地を取材したジャーナリストが批判

ロシア軍は無差別攻撃で一般市民を殺害していた

ロシア軍に空爆された集合住宅 ウクライナ北部チェルニヒウにて筆者撮影

ロシア軍に空爆された集合住宅。ウクライナ北部チェルニヒウにて筆者撮影

 朝日新聞社が運営する言論サイト「論座」に掲載された記事もひどかった。同じく8月12日、石川智也・『朝日新聞』記者が、映画監督の想田和弘氏と対談する形で、「非暴力抵抗こそが侵略から国民を守る~非武装の精神で戦争の根を断て 想田和弘と語る(前編)」との記事が掲載された。同記事の主題は、非暴力・不服従による抵抗についてであるが、記事中で石川記者と想田監督は、ウクライナの人々が戦禍に苦しんでいるのは、ゼレンスキー政権側に責任があるかのような主張をしている。  石川記者は「戦闘員と非戦闘員を明確に分けて扱うことが戦時国際法(国際人道法)の原則のはずですが、ゼレンスキー大統領はそれを自らあいまいにして国民を戦争に動員した面があります」と述べている。  想田監督も、ロシア軍によって住民虐殺が行われていたウクライナの都市ブチャについて「ウクライナは、国家としては武力による抵抗を選んでいます。非暴力だから虐殺が起きたわけではなく、武装抵抗の帰結として虐殺事件が起きてしまっているわけです」と主張している。  石川記者の言う国際人道法は、一般市民の殺害につながる無差別攻撃を禁じ(ジュネーヴ条約第一追加議定書第4編第51条4-5)、「いかなる武力紛争においても、紛争当事者が戦闘の方法及び手段を選ぶ権利は、無制限ではない」(ジュネーヴ条約第一追加議定書第3編第1部第35条1)としている。  だが、筆者が取材したウクライナ北東部の都市ハルキウでは、ロシア軍によって砲撃やロケット弾による無差別攻撃が連日繰り返されていた。これにより、住宅地や学校、保育園、病院などが破壊され、一般市民の犠牲も相次いだ。つまり、ゼレンスキー大統領が市民に抵抗を呼びかけたことは、ロシア軍が行っている国際人道法違反の原因にも、正当化する根拠にも断じてならない。

「武装抵抗の帰結」で虐殺が起きたわけではない

破壊された商業ビルと住宅。戦争被害の責任はロシア側にこそある。ウクライナ北東部ハルキウで筆者撮影

破壊された商業ビルと住宅。戦争被害の責任はロシア側にこそある。ウクライナ北東部ハルキウで筆者撮影

 想田監督もブチャでの虐殺の実態をもっと知るべきである。今年3月、ロシア軍に占拠されていた間、ブチャにはウクライナ軍はいなかった。それにもかかわらず、人々は殺された。攻撃で、電気・ガス・水道などのライフラインが破壊されたため、住民たちは水を求めて屋外に出ざるを得なかった。  どう見ても非武装の市民を、ロシア軍のスナイパーや兵士は問答無用で銃殺するということが相次いだ。地元当局者の話では、400人以上の犠牲者の約半数が、上述のような形で殺されたとのことである。これらの犠牲も、「武装抵抗の帰結」だと言うのだろうか?
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ロシア軍にこそ「殺すな」と抗議すべき
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