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ウクライナ報道にみる「朝日新聞」の迷走――現地を取材したジャーナリストが批判

ロシア軍にこそ「殺すな」と抗議すべき

ロシアによる侵攻に抗議する、在日ウクライナ人のデモ。今年3月、東京にて筆者撮影

ロシアによる侵攻に抗議する、在日ウクライナ人のデモ。今年3月、東京にて筆者撮影

 そして8月17日にも、「『殺したらいけない』がなぜ言いづらい 徹底抗戦が支持される危うさ」と題し、山本昭宏准教授(神戸市外国語大)のインタビュー記事が掲載された。  同記事で、山本准教授は「戦争体験者がたくさん生きていたら、もっとゼレンスキー大統領に対して違和感を言う人がいてもおかしくないのではないかと思います」「ベトナム反戦運動のときだったら『殺すな』ということが掲げられました。今回のウクライナ侵攻でも、戦場に行きたくないのに殺し合いに巻き込まれているロシア兵がいるということへの想像力が強く働いたでしょう」と述べている。  だがベトナム反戦運動は、ベトナム側に対し「殺すな」と抗議したのではなく、同国に攻め込んでいた米軍に対し抗議したものだ。今回のウクライナ侵攻に当てはめるのであれば、ゼレンスキー政権に対してではなく、ウクライナに攻め込んだロシア軍に対してこそ「殺すな」と抗議するべきなのではないのか? 前出の豊永教授と言い、山本准教授と言い、侵略した側と侵略された側を逆にした前提そのものがおかしいのではないだろうか。

ウクライナ危機に乗じた改憲派への対抗手段か

 これらの「識者」の論考に共通するのは、結局のところ「ウクライナで何が起きているか」に重きを置いているのではなく、過去の日本の戦争を批判することや自らの思想・信条なのだ。確かに、ウクライナ危機に乗じる形で、政府与党などで「改憲すべき」との主張が活発になっていて、それを懸念し批判しようとすることは理解できる。  だがそうした改憲派と同様に、自らの主張のために中途半端な理解でウクライナを利用することも浅ましいことだ。『朝日新聞』も社としての立場は護憲なのだろうが、ウクライナをダシにするのではなく、正面から改憲派の主張に反論すべきだろう。ウクライナ現地で取材する同紙の記者たちには同業の端くれとして敬意を持っているからこそ、ここ最近の紙面にはやはり苦言を呈したくなるのだ。 志葉 玲 フリーランスジャーナリスト。2003年3月、イラク戦争開戦直後に現地を取材、それ以降、イラクやパレスチナなど中東の紛争地取材を重ねてきた。今年4月に、ウクライナでの現地取材を敢行。同8月にウクライナ取材を収録した『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)を上梓。  
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